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【ライター記事】丹沢でマインドフルネス体験。OMOTANガイド白井剛司さんと歩く森と農園の時間

表丹沢野外活動センター周辺

毎日の忙しさに疲れを感じたときは、森の中へ出かけてみませんか。
表丹沢の森に入ると、木々のざわめきや水の音が耳に届き、足元の土の感触が一歩ごとに伝わってきます。そうした自然の中に身を置くことで、頭の中で回り続けていた考えが少し静かになり、自分の心と身体の状態に気づきやすくなります。
今回は、OMOTANガイドの白井剛司(しらい たけし)さんと一緒に、表丹沢の森を歩きました。白井さんは、自然の中で五感を使い、自分の状態に気づくマインドフルネスを伝える活動をしています。
表丹沢野外活動センター周辺の森を歩き、葛葉の泉(くずはのいずみ)の水音に耳を澄ませ、近くの農園にも足を運びました。白井さんと歩く表丹沢の魅力を紹介します。

表丹沢野外活動センターの森で体験する歩く瞑想

歩く瞑想をする白井さん

表丹沢野外活動センターの駐車場で白井さんと合流し、森の中へ向かいました。

駐車場から少し歩くと、杉の木が並ぶ道に入ります。日差しは木々に遮られ、空気が少しやわらいだように感じます。

森の中で最初に体験したのは、白井さんが案内する「歩く瞑想」でした。目的地へ急いで向かうのではなく、一歩一歩の感覚に意識を向けながら歩くことをいいます。

普段の生活では、次にやることや気になることが頭の中に次々と浮かびます。白井さんの案内では、そうした考えを無理に消そうとせず、いったん横に置き、今の身体の感覚に意識を向けていきます。

まずは、立った状態で足裏に意識を向けました。右足、左足へとゆっくり交互に体重を移します。足の裏に体重が乗る感覚を確かめながら、ふくらはぎ、太もも、腰、胴体、腕、首、顔、頭へと、意識を少しずつ広げていきます。

目を閉じて体を左右に動かしていると、足元に向いていた意識が少しずつ周囲へ広がっていきました。風の音、木々のざわめき、鳥の声、遠くの工事の音が耳に届きます。森の中で心が静かになっていく感覚です。

しばらくして目を開くと、森の緑にもさまざまな色があることが分かりました。明るい緑、深い緑、光を受けて透けるように見える緑。何気なく見ていた一枚の葉にも、自然と意識が向きます。

木の幹に手を当てると、表面は思っていた以上にやわらかく、ふかふかとした感触が印象的です。

白井さんの案内によって、表丹沢の森は「通り過ぎる場所」から「自分の感覚に気づく場所」へと変わっていきました。

葛葉の泉の水音と木立の中で聞く詩

葛葉の泉の水音に耳を澄ませる

表丹沢野外活動センターから坂道を登っていくと、葛葉の泉から流れる水の音が聞こえてきます。水の音は一定ではありません。強く聞こえる瞬間もあれば、木々のざわめきに溶け込む瞬間もあります。

「自然の中には不規則な『ゆらぎ』があります。風の音、水の流れ、鳥の声は、すべて同じ調子ではありません。自然の中に身を置くと、自分の呼吸や身体の感覚も、そのゆらぎに少しずつなじんでいくんです」と白井さんは、静かに語りかけます。

森を眺めながら、白井さんが詩を朗読してくれる時間もありました。木々を見ながら言葉に耳を傾けると、森の風景が少し深く感じられます。ただ景色を見るのではなく、言葉、音、風、身体の感覚が重なっていく時間でした。

森林浴や森林セラピーという言葉があります。白井さんの案内は、それらと近い心地よさを持ちながら、自分自身の状態に気づくことを大切にしています。

“マインドフルネス”とは自分の状態に気づくこと

森を眺めながら詩を朗読する白井さん

マインドフルネスという言葉を聞くと、心を落ち着けることや、前向きな気持ちになることを思い浮かべる人もいます。

「マインドフルネスで大切なのは、良い状態になることだけではありません。『疲れている』『不安がある』『落ち着かない』といった状態も含めて、今の自分に気づくことが大切なんです」。白井さんはそう話します。

自分の状態に気づくことで、その結果として心がおだやかになり、良い、悪いという判断から少し離れて物事を見られるようになります。白井さんは、その心の柔軟性を大切にしています。

森の中で行った体験は、まさにその感覚に近いものでした。頭の中で考えごとを続けるのではなく、足裏や呼吸、周囲の音へ意識を向けます。すると、次々と浮かんでいた考えが少し静かになっていきました。 現代の生活では、仕事や予定、スマートフォンの情報に追われがちです。頭を使う時間が多く、身体や心の状態に気づく時間は少なくなります。森の中で立ち止まることは、その流れを一度ゆるめる時間になります。

ハードワークの経験が今の活動につながる

自然の中で参加者に語りかける白井さん(白井さん提供)

白井さんは、かつて広告代理店で営業職として働き、大手企業の広告宣伝やマーケティングに関わっていました。その後は人材育成の仕事に長く携わったそうです。

多くの人と向き合う中で、忙しく働く人たちの心と身体の状態にも触れてきました。そして、白井さん自身も、ハードワークの中で心身の不調を経験したといいます。その経験が、現在の活動につながっているといいます。

白井さんが目指しているのは、仕事や日常に追われる人が、自然の中で一度立ち止まる時間を持つことです。自分を鍛えるのではなく、自分の状態に気づくこと。無理に前向きになるのではなく、今の心と身体をそのまま受け止めることです。

「その積み重ねが、今の時代に必要な心の柔軟性につながっていくと思っています」。

つまり日常の最前線から一時的に離れるという意味を持つ「リトリート」こそ、白井さんが表丹沢で届けようとしている時間なのです。

森から農園へ。アグリヒーリングで身体が自然に動き出す

やまやま農園でのアグリヒーリングを実現に向けて企画中

森での体験のあと、白井さんが案内してくれたのが、秦野市内の「やまやま農園」です。畑の向こうには丹沢の山並みが広がります。

ご夫婦で農園を営み音楽活動も楽しんでいる姿に共感し、白井さんは今年からやまやま農園のコミュニティに参加しています。畑に通いながら相談に乗ってもらい、刺激を受けて学ばせてもらっている場所だといいます。

森では静かに自分の内側へ意識が向きました。一方、農園に着くと、土や作物、人の営みが近くに感じられ、気持ちが少し上向いていきます。歩いてみたい、触れてみたい、いろいろなことに挑戦してみたいという前向きな気持ちが生まれました。

白井さんは、農作業にも心身を整える力があると話します。農業体験では、リラックスしながら身体を適度に動かせます。人と一緒に作業することで、会話やつながりが生まれることも特徴です。

農業を通じた癒やしは、アグリヒーリングとも呼ばれます。森で心を静かにし、農園で身体を動かして元気になる。白井さんが考えるリトリートには、この二つの整い方がありました。

これまでは、個人向けの農場リトリートに加え、企業や組織に向けて、田植えや稲刈りといった稲作体験の場を提供する機会も多かったそうです。春に苗を植え、秋に収穫する流れは、会社の年度や半期の節目とも重なります。自然の営みと人の働き方をつなげて考える視点は、人材育成に関わってきた白井さんならではです。

今後は、個人向けを中心に、野菜づくりの場でも活動を広げていきたいと話します。やまやま農園では、落花生、ブルーベリーなどを育てているそうです。

農園では、農作業だけでなく、自然の中で自由に過ごす楽しさも感じられました。畑の端に生えている木に登ったり、剪定した枝でオブジェを作ったりすることもあるそうです。

また、少し離れた場所にある田んぼでは、農作業をともにした仲間で音楽や踊り、染め物を楽しむ時間もあるといいます。

土や作物に触れるだけでなく、人と人が自然につながる場でもある。やまやま農園での時間を通して、白井さんが考えるリトリートの幅広さが見えてきました。

表丹沢を拠点に、これからの形をつくる

やまやま農園のミカコさんと白井さん

現在、白井さんの活動は新しい形へと移行途中です。これまでのフィールドから場所を変え、今後は市内の農園などでも、森や畑を生かしたリトリートを組み立てていく予定です。

また、白井さん自身が参加している農場のコミュニティでも、どのような活動ができるかを考え、話し合いながらアイデアを育てています。

具体的なプログラムは、これから整えていく段階とのこと。もちろん、表丹沢を本拠地として大切にしていく思いは変わりません。

OMOTANガイドとしての白井さんの魅力は、自然の中で何を感じるか、自分の心と身体がどのような状態にあるか、そうした気づきを、やさしく引き出してくれるところにあります。

OMOTANガイドと歩くと表丹沢の見え方が変わる

白井さんの案内で、表丹沢の森の感じ方が変わっていく

今回、白井さんと表丹沢の森を歩いて感じたのは、自然の中に身を置くことで、日々の仕事や予定に向いていた意識が少しずつほどけていくことでした。

普段の生活では、頭の中の多くを仕事や次にやることで占められています。何かをしていても、別の予定や気になることが浮かび、考えが止まらない時間があります。

森の中で目を閉じ、足裏の感覚や水の音、木々のざわめきに意識を向けていると、その考えが少しずつ遠くなっていきました。頭の中を占めていたものから解放され、今ここにある音や手触りを感じる時間へと変わっていきます。

一人で歩いていたら、木の幹のやわらかさや一枚の葉の緑の違いに、ここまで意識を向けることはありませんでした。白井さんの案内があったからこそ、表丹沢の森は「眺める場所」から「自分の感覚に気づく場所」へと変わりました。

農園では、森とは違う変化もありました。静かに内側へ向いていた意識が、土や作物、人との関わりに向かっていきます。新しいことに触れてみたいという前向きな気持ちが生まれました。

森で心を静かにし、農園で身体が動き出す。白井さんが伝えるマインドフルネスやリトリートには、表丹沢の自然を通して自分の状態に気づく時間があります。 OMOTANガイドと歩くことで、表丹沢の風景は新しい表情を見せてくれます。白井さんの案内は、忙しい日常から少し離れ、心と身体を整えるきっかけをくれる体験でした。

OMOTANライター 露木啓 (つゆきけい)
【得意分野】 きのこ、散策、人物取材

秦野市在住のWebライターです。きのこが大好きで、休日はよくカメラを持って散策に出かけます。
きのこにまつわる食文化や人物の取材が得意です。きのこを通して、表丹沢や秦野ならではの魅力を発信していきます。
Instagram:@kinocoordinator

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