表丹沢を知る

About Omote-Tanzawa

表丹沢について

丹沢は神奈川県の北西部に位置し、標高1,000~1,600メートルほどの山々が、東西へ約40キロメートル、南北へ約20キロメートル連なる山塊で、その主脈にある塔ノ岳を最高峰にその南側、東西に連なる山並みが表丹沢と呼ばれます。表丹沢は、丹沢山地を代表する塔ノ岳、鍋割山、大山、三ノ塔といった峰で構成されており、その大部分が丹沢大山国定公園に指定されています。急峻な地形のため深い渓谷や大小さまざまな滝が多くあるこの地域は、ブナやモミの原生林があり、カモシカなどの大型野生動物が棲息するなど、大都市に近いにもかかわらず、豊かな自然が残されており、自然探勝や沢登り、縦走登山など多様な山歩きを楽しめるのが特徴です。また、眺望にも恵まれており、東には広大な関東平野、南面眼下に紺碧の太平洋、西に霊峰富士山と大パノラマの雄大な景色を望むことができます。また、麓のまち秦野は、由緒ある史跡や遺跡、伝統的な祭りや行事、温泉や湧水、新鮮な農産物など、さまざまな資源にも恵まれており、表丹沢には、毎年、多くの人が訪れています。

丹沢は日本のヒマラヤ? 南の海からやってきた丹沢

丹沢は約1,700万年前、太平洋の海底火山として誕生し、フィリピン海プレートにのって北上して、約500万年前に本州に衝突しました。さらに、約100万年前の伊豆半島の衝突により、丹沢の隆起と侵食が起こり、その原形が作られました。丹沢の各地で、温かい海に生息する貝やサンゴなどの化石をみつけることができるのは、丹沢が南の海からやってきた証拠です。
丹沢の誕生は、世界でも稀な地質現象によるもので、その成り立ちは、かつては独立した大陸だったインドがユーラシア大陸に衝突してできたヒマラヤ山脈と似ています。

信仰の山から関東屈指の山岳景勝地へ

表丹沢を含む丹沢山地は、山岳信仰に生きた修験者(山伏)が訪れた歴史を持ち、今でも「行者」「大日」など修験者を偲ばせる山名が残っています。その先駆を務めたのは、奈良時代の天正勝宝7年(755年)、東大寺初代別当の良弁僧正が丹沢山地に入り、大山頂上に大山寺を開基して信仰の霊場を開いたとされています。奈良、平安から江戸時代にかけて、丹沢山地全域は、関東地方における修験の一大道場となりました。戦後には、観光や地域経済の発展から、丹沢を活用しようという動きが高まり、登山道や山小屋が整備されました。そして、昭和30年(1955年)の第10回神奈川国体の開催、昭和40年(1965年)の「丹沢大山国定公園」の指定等を経て、丹沢の名は全国に知れ渡り、1年を通して全国から多くの登山者やハイカーが訪れるようになりました。現在でも都心からのアクセスが良い関東近郊の登山スポットとして名高い地域です。

表丹沢が誇る豊かな自然

低山ではスギ、クヌギ、コナラなど人が里山として利用してきた林、塔ノ岳、鍋割山などの標高800メートル以上の奥山林には、太平洋側では貴重ともいえるブナ林など、豊かな森林が広がっており、地域固有のサガミジョウロウホトトギスなどの植物も生息しています。斜面は急峻で、沢沿いにはイワシャジンやイワタバコ、尾根の岩場にはコイワザクラなどが見られるのも特徴的です。丹沢は標高がそれほど高くなくても多様な立地環境を有するため、ニホンジカやカモシカなどの大型哺乳類やオオルリやヤマセミといった鳥類が棲息し、ヒダサンショウウオやナガレタゴガエルなどの希少な両生類も確認されるなど、多くの生きものが命を育んでいます。

表丹沢の森林と「名水の里 秦野」

雨が降ると、森林では木々や下草、落ち葉などが、やわらかく雨のしずくを受け止め、土に浸み込んだ雨水は、時間をかけて、微生物やミネラルの働きで、きれいでおいしい水となります。丹沢山地に降った雨は、麓の秦野盆地の地中深くに浸み込み、その水量は、箱根の芦ノ湖の約4倍、約7億5千万トンと推計されており、その豊富で良質な湧水は、昭和60年(1985年)に全国名水百選に認定されました。また、平成28年(2016年)に環境省が実施した「名水百選選抜総選挙」の「おいしさがすばらしい名水部門」で、地下水をボトリングした「おいしい秦野の水~丹沢の雫~」が全国第1位に輝いています。表丹沢の森林が育んだ地下水が、市内のいたるところで湧き出る秦野は、全国有数の「名水の里」です。

表丹沢が育む良質な木材

戦国時代から江戸時代には、小田原城や江戸城築城のために丹沢山地の木材が利用されました。江戸100万人の都市生活を支えたのも丹沢山地の炭や薪でした。表丹沢で生産される木材は品質が高く、近年では、東京・歌舞伎座の舞台や花道のほか、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の選手村ビレッジプラザにも使用されています。

表丹沢の豊かな自然を未来へ

表丹沢は、かつて箱根や富士山が噴火したとき、大量の火山灰をかぶって、大きな被害を受けたことがあります。また、大正時代に起きた関東大震災は激しい斜面の崩壊を引き起こし、今でも緑が回復せず、崩落が続いている場所があります。しかし、表丹沢の多くの生きものは、長い時間をかけて、お互いのバランスを保ちながら、豊な自然をつくり上げてきました。近年は、大気汚染をはじめとするさまざまな影響により、ブナの立ち枯れや麓の里地里山の荒廃といった問題がおき、ブナ林や里地里山を保全再生する取り組みが行われています。昭和40年代の登山ブームの際には、全国的に山の放置ゴミが問題となりました。そのときにも、市民団体の発案により、行政が一体となり、全国に先駆けて「ゴミ持ち帰り運動」が丹沢で始まったことは、丹沢を愛する人々の自然保護意識の高さがうかがえます。
表丹沢の豊かな自然を未来へ。訪れる人一人ひとりの意識と行動で、表丹沢のかけがえのない自然を守り、次の世代の子供たちに健全な状態で引き継ぐことができます。

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