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【ライター記事】県立秦野戸川公園・はだの丹沢クライミングパークに野外彫刻を新設!「OMOTAN Sculpture Award」

県立秦野戸川公園・はだの丹沢クライミングパーク

秦野の自然を象徴する「県立秦野戸川公園」と「はだの丹沢クライミングパーク」この2つの拠点に2026年の春、彩りを添える新しい彫刻が加わりました。「彫刻のあるまちづくり」に取り組んできた秦野市が迎えた市制施行70周年という節目。22年ぶりに開催された「第6回秦野丹沢野外彫刻展 OMOTAN Sculpture Award」で全国91点の応募の中から選ばれた2作品です。
派手に主張するのではなく、秦野の自然や生き物の魅力を改めて感じさせてくれる、落ち着いた存在感のある作品です。なぜこの場所に、この作品が選ばれたのでしょうか。今回は、3月29日に行われた除幕式の様子とあわせて、選考の視点や作品に込められた想いを秦野市役所文化振興課の宮原諒さんに伺いました。

秦野で出会う、アートのある風景

彫刻のあるまちづくり事業をもとに設置されてきた秦野市の彫刻(画像提供:秦野市役所)

今回開催された「第6回秦野丹沢野外彫刻展 OMOTAN Sculpture Award」は、これまでの取り組みに加え、市が進める「表丹沢魅力づくり構想」と連動した企画として実現されました。豊かな自然が広がる「表丹沢の麓」を舞台に、アートという切り口から、このエリアの魅力を訪れる人々へより深く伝えることを目指しています。

今回の募集では、彫刻を設置する場所を具体的に設定し、それぞれの場所にふさわしいコンセプトを掲げました。審査では作品の美しさだけでなく、自然との関係性も重視されました。そして厳しい選考の結果、こちらの2作品が選ばれました。

【県立秦野戸川公園】

  • 設置場所:公園の正面入口にある大倉バス停近く
  • コンセプト:丹沢に続く登山口として、多くの登山客がスタートする場所に相応しい野外彫刻
  • 選ばれた作品:「星に向かう樹」作者:吉田隆さん
「星に向かう樹」作者:吉田隆さん(画像提供:秦野市役所)

【はだの丹沢クライミングパーク】

  • 設置場所:施設の入口
  • コンセプト:山に囲まれ、見て、触れて、楽しめる、子どもから大人まで心をくすぐる野外彫刻
  • 選ばれた作品:「巨石に就(つい)て」作者:松岡圭介さん
「巨石に就て」作者:松岡圭介さん

筆者が実際に作品を目の前にしたとき、それぞれの場所のコンセプトにぴったりと寄り添い、周囲の環境にとても美しく馴染んでいることに驚かされました。ただそこに置かれているだけでなく、秦野の豊かな自然を未来へつなぐ新しいシンボルになっていくことでしょう。

2つの新しい作品のお披露目となった除幕式。ここからは、当日の様子を詳しくレポートします!

青空の下で行われた除幕式

(左から)松岡さん、高橋市長、吉田さん

サクラやチューリップが色鮮やかに咲き誇り、多くの人でにぎわう3月最後の日曜日。春風が心地よく吹き抜けるなか、県立秦野戸川公園とはだの丹沢クライミングパークの2会場で、新たな野外彫刻の除幕式が行われました。

式典は、高橋昌和市長の挨拶で幕を開けました。

「全国からの応募の中から選ばれたこの作品は、丹沢の豊かな自然と調和し、秦野が誇る文化資源の一つとなるはずです。ここを訪れる多くの皆様を魅了し、感動を与え続けてくれるはずです」と期待を寄せました。

式典で挨拶される高橋市長

選考協議会委員長の水沢勉さんからは、野外彫刻ならではの「難しさと喜び」についてお話がありました。

「今日は、作品が初めて生命を帯びる特別な出発点」と切り出し、応募作品のマケット(小型の模型)をもとに完成後の姿を何度も想像しながら、設置場所との関係性を深く議論してきた選考過程を振り返りました。

「野外彫刻は、作品の想定を超える重量 や素材が環境に与える影響など、予期せぬ困難がつきものです。それでも、多くの壁を乗り越えて今日を迎えることができました。協力してくださったすべての方々、そしてこれから作品を末長く愛してくださる未来の皆様に、心より感謝申し上げます」と穏やかな笑顔で喜びを伝えました。

来場者へ挨拶を届ける吉田さん(左)と松岡さん(右)

続いて、作者の2人が感謝とともに作品に込めた想いを語りました。

「星に向かう樹」の作者・吉田隆さんは、式典に立つ自身の気持ちを「入学式を迎える子どもに付き添う親のような気持ち」と例え、次のように述べました。

「モチーフは山と木、動物といった自然です。造形的には架空の動物をイメージし、分解して行間を捨て去り、薄く軽く、ステンレスを磨いたりしながら、空間に溶け込んでいくような姿を目指しました。作品の中心には木があり、そこを宇宙と考え、羽根を持つ動物が、その木を他の惑星へと運んでいく ……そんなイメージで制作しました」

また、「巨石に就て」を制作した松岡圭介さんは、この場所との運命的な出会いを振り返りました。

「この場所に応募した理由は、はだの丹沢クライミングパークのカラフルなボルダーウォールと、私が以前から取り組んでいるカラフルな作品との相性の良さを感じたからです。普段は人体をモチーフにすることが多いのですが、今回はあえて『自然石』を10倍に拡大する手法をとりました。自然物の中に霊性を見出すアニミズムの象徴のようなイメージで、カラフルな壁と響き合うような作品を目指しました」

記念楯の授与の様子

その後、秦野産木材で作られた記念楯の授与が行われ、いよいよ除幕へ。

「星に向かう樹」は、金属の質感が空の光を反射し、まるでファンタジーの世界から飛び出して来た動物のような佇まいを見せていました。「巨石に就て」は、ボルダーウォールのような色とりどりのタイルが空間に映え、見ているだけで心が踊ります。

県立秦野戸川公園にて除幕の様子
はだの丹沢クライミングパークでの除幕の様子

式典後には、「星に向かう樹」に足を止め、静かに見つめる人の姿や、「つい触ってみたくなりますね」と、そっと「巨石に就て」を手でなでる人の姿も見られ、早くも施設に来場した人々の心を動かしているようでした。

この場所に、この作品が選ばれた理由

それぞれの彫刻のモチーフとなった鹿とクライミングウォール

今回、全国から寄せられた多くの作品の中から、なぜこの2点が選ばれたのでしょうか。選考協議会委員を務めた水沢勉さんの講評をもとに、審査の舞台裏を紐解きます。

除幕式でも触れられた通り、今回の選考で最も重視されたのは「環境との対話」でした。秦野の豊かな自然をより際立たせ、その自然からエネルギーを受け取って輝きを増していく――設置された場所でしか成立しない、唯一無二の関係性が求められました。

県立秦野戸川公園の「星に向かう樹」は、設置場所にある植栽や施設と見事に調和している点が評価されました。鹿や木といった具体的なモチーフを用いながらも、写実の枠を超えた表現で、見る人の心に独自の物語を語りかけてきます。この作品が置かれることで、郊外の静かな大地と天空を結ぶような会話が生まれることが期待されました。

また、はだの丹沢クライミングパークの「巨石に就て」も、水無川を望む西向きの開けた斜面という立地との自然な一体感が高く評価されました。大地が刻んできた歴史を持つ自然石をもとに、作家の丁寧な手仕事が加わることで、鮮やかな色彩をまとう芸術作品へと新たな命を宿しています。自然と人とをつなぐ象徴的な存在として、今回の受賞となりました。

素材や形は違えど、どちらの作品も秦野の風景に溶け込み、新たな魅力を引き出してくれる――審査員たちは、その確かな手応えをもって今回の選出に至ったようです。

「彫刻のあるまちづくり」に込められた想い

緑の木々と空を背景に立つ「星に向かう樹」

今回のプロジェクトを支えてきた一人、秦野市役所文化振興課の宮原諒さん。企画の立ち上げから設置に至るまでの想いをうかがいました。

「まずは長く市民に親しまれること、そして自然環境との調和を一番に考えました」と宮原さん。前回はおおね公園内のどこか、という緩やかな指定で県内公募でしたが、表丹沢の魅力をさらに引き出すため、今回はあえて設置場所を細かく指定したうえで作品を募集しました。そして、さらに景観に合った作品と出会うため、全国公募に踏み切ったといいます。今回の選考には、運営側の強い意気込みが込められていました。

選ばれた2作品についても、宮原さんは高く評価しています。

「『星に向かう樹』は、周囲の草木や丹沢の山々に自然と馴染みながらも、確かな存在感があります。自然を肌で感じるのと同じように、この彫刻にも親しみを感じてもらえたら嬉しいですね。『巨石に就て』は、カラフルなボルダーウォールとの相性も抜群で、クライミングパークにぴったりの作品だと感じています」

事務局として選考のプロセスを見守ってきた宮原さんは深く納得している様子でした。

鮮やかに、風景と響き合う「巨石に就て」

最後に宮原さんは、市民への想いを次のように結びました。

「秦野市は『彫刻のあるまちづくり』として、人々に潤いや安らぎを感じてもらえる環境づくりを進めてきました。日々の生活で彫刻を眺める機会は少ないかもしれませんが、これを機に、ほんの数秒でも足を止め、彫刻を通して私たちが暮らす街の魅力を再発見し、誇りや愛着を深めていただければ嬉しく思います。彫刻との向き合い方は自由です。それぞれの感性で自由に触れ合うことで、新たな発見や対話が生まれる場所になればと期待しています」

彫刻が彩る、秦野の未来

これまで筆者にとって野外彫刻は、風景の一部として何気なく通り過ぎてしまう、少し遠い存在でした。しかし、設置に至るまでの背景や関わった方々の熱意に触れた今、その見え方は変わりました。そこには、秦野の自然を大切に思い、人々の暮らしを彩りたいという深い願いが込められていたのです。

目に見える彫刻という形を通して、誰かの願いが次の世代へと手渡されていく。そんな「想いを形にして残し、伝えていくこと」の大切さを、改めて教えられたように感じます。

完成した作品を見つめ、時にはそっと触れてみる。そのわずかなひとときが、自分たちが暮らす街や身近な自然の美しさを、改めて大切に思う時間になりそうです。

新しく街の仲間入りをした彫刻が、これからどのように風景の一部となっていくのか。秦野を訪れた際は、ぜひ一度立ち止まって、その温もりに触れてみてくださいね。

■問い合わせ先
 神奈川県秦野市役所 文化スポーツ部 文化振興課 文化振興担当
 電話番号:0463-86-6309

■星に向かう樹
設置場所:県立秦野戸川公園 大倉バス停近く
施設住所:神奈川県秦野市堀山下1513
作者:吉田隆さん

巨石に就(つい)て
設置場所:はだの丹沢クライミングパーク 施設入口
施設住所:神奈川県秦野市戸川1398
作者:松岡圭介さん

OMOTANライター 深瀬 あみ (ふかせ あみ)
【得意分野】 登山、キャンプ

ライター、カメラマンとして活動しながら、趣味の山登りを楽しんでいます。
神奈川に移り住み、初めて表丹沢を訪れたとき、その美しさにすぐに引き込まれました。
自然の息吹を感じられる表丹沢の素晴らしさを、言葉と写真でお届けします。 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇

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