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【ライター記事】森と暮らしをつなぐ【丹沢MONクロモジ・アロマウォーター】~名水とともに蒸留された“表丹沢の香り”の物語~

丹沢MON 合同会社『丹沢MONクロモジ・アロマウォーター』

深呼吸したくなる瞬間って、最近ありましたか。
忙しい毎日の中で、気づけば呼吸も浅くなっている——そんな人にこそ届けたい香りがあります。
ヤビツ峠へと続く表丹沢の森から生まれたクロモジのアロマウォーターは、ひと吹きで、森の空気をそっと日常に連れ戻してくれる存在です。
それはただの香りではなく、どこか懐かしい“森の記憶”を呼び覚ますような、不思議な感覚をもたらしてくれます。
秦野市の地域ブランド「はだのブランド」が2025年にリニューアルし、新たなコンセプト「丹沢の杜、名水のまち」を象徴する6品が認証されました。
連載の第5回目として今回スポットを当てるのは【丹沢MONクロモジ・アロマウォーター】。
この一瓶に込められているのは、香りだけではありません。
森を守りながら丁寧に採取されたクロモジと、名水に磨かれた一滴、そしてそれを未来へつなごうとする人の想い。
この香りは、私たちの暮らしと表丹沢の森を、静かに、そして確かにつないでくれています。

ヤビツ峠レストハウスから広がる、はだのブランドの新しいかたち

丹沢MON創業メンバー左から平野さん、桐生さん、中村さん

表丹沢の山へ向かう人、街へ戻る人。訪れる登山者や、トレイルランナー、サイクリストにとって、ひとつの拠点となっている場所があります。

それが、ヤビツ峠にある「ヤビツ峠レストハウス丹沢MON CAFE」です。ここでは、食や体験を通してこの土地の魅力を伝えてきました。

山へ向かう人にとっても、街へ戻る人にとってもここはふっと立ち止まって呼吸を整える、まさに「丹沢の門(もん)」のような場所です。

その空間や取り組みについては、以前のOMOTANライター記事でも紹介しています。木の温もりに包まれた空間や、地元の恵みを生かしたメニュー、そしてオーナー 平野有恒(ゆうこう)さんと君子さんご夫妻のあたたかな人柄が、この場所の魅力をつくり出しています。

ライターメモ
平野有恒(ゆうこう)さんと君子さんご夫妻の記事はこちら
【ライター記事】「よし!ヤビツ行こう!」と思い立ったらまずここ! “休憩所”じゃ言い表せないヤビツ峠レストハウス丹沢MON CAFEの魅力【OMOTAN人 vol.3】

そんな場所で生まれたのが、今回ご紹介するはだのブランド認証品【丹沢MONクロモジ・アロマウォーター】です。

神奈川県秦野市の地域ブランド「はだのブランド」が掲げる「丹沢の杜、名水のまち」というコンセプトを体現した、この土地ならではの価値をカタチにした一品です。

森で感じた空気や時間を、日常へ持ち帰るための一滴は、どのようにして生まれたのか、オーナーの平野有恒さん、平野君子さん、蒸留所長の桐生克明さんに取材していくなかで商品の開発背景や、これからの丹沢の森の未来につながる物語が見えてきました。

ストレスの多い現代社会において森で感じた空気や時間を、日常へ持ち帰るための一滴、ウェルビーイングを社会的価値として掲げる丹沢MONの試みです。

その香りは、暮らしの中にあった—森の記憶からはじまった、クロモジという選択

クロモジ・アロマウォーターとクロモジの花

「山に行けば、出会えるものでした」

そう話す平野さんにとって、クロモジは特別な植物ではなく、子どもの頃から身近にある存在でした。
秦野で生まれ育ち大人たちと山で過ごす中で、「これがクロモジだよ」と教えられた記憶。

「山で疲れたときは、クロモジの枝を嗅ぐといい」
「眠いときは、サンショウの葉をかむと目が覚める」

そんな言葉もまた、自然とともに生きてきた人たちの“当たり前の知恵”として受け継がれてきました。

香りは特別なものではなく、暮らしの中にあるもの。
五感で自然を感じながら生きてきた、その記憶の延長線上にクロモジがありました。

転機となったのは、2021年3月に秦野市の施設、ヤビツ峠レストハウスの運営を始めたことでした。
「この場所ならではのものを届けたい」その想いから、表丹沢の自然に改めて目を向けるようになります。

秦野・丹沢の魅力を表現することを心がけた商品やメニューを考えるなかで始まったのが、クロモジを使ったハーブティーの開発でした。

各地にあるクロモジのお茶は、素朴に枝や葉を煮出すものが一般的。
しかし丹沢MONでは、春の芽吹き、花開く季節に「この”とき”をお茶にしてみては」と発想を広げます。

試作を重ねるうちに、森の木漏れ日を受けて育つクロモジの花に、華やかでやさしい上品な甘みがあることに気づきました。

まるで、森の景色をそのまま閉じ込めたような味わい。

こうして生まれたのが、花を使った【丹沢MONクロモジ・リーフティー】です。
丹沢の森を感じる、新たな一杯でした。

リーフティーに使用されるクロモジの葉と花

取材中、実際にそのハーブティーをいただく機会がありました。

口に含んだ瞬間に広がったのは、やわらかく上品な甘み。
すっきりとしているのに、ほんのりと花の香りが重なり、やさしい余韻が静かに残ります。

強さではなく“心地よさ”で記憶に残る味わいでした。

まるで、木漏れ日の中にいるような感覚。
この一杯に、丹沢の森の時間がそのまま溶け込んでいるように感じられました。 この取り組みはやがて、次の事業へと発展していきます。

名水が引き出す、森の香り——ゼロからつくった蒸留所

手作業で行なわれるクロモジの蒸留作業

「リーフティーの製造は春のほんのひと時の恵み。この素晴らしいクロモジを丹沢の地域資源としてブランド化できないか」

そしてたどり着いたのが、 “クロモジを中心にしたアロマ事業”の展開でした。

蒸留所づくりはゼロからのスタートでした。

場所として選んだのは、平野家で明治時代から使われてきた古い納屋。中には長年積み重なった荷物が残されており、まずはそこを片付けるところから始まりました。

手作業で空間を整え、ようやく蒸留のための場所を確保。
さらに、南会津の蒸留所へ足を運んだり蒸留機メーカーの方に相談を繰り返し、一から知識を学びながら、設備を整えていきました。

こうして生まれた蒸留所で行われている工程は、すべて手作業です。

収穫に一日。
翌日は仕分けと粉砕を行い、蒸留機へ。

蒸留には約4時間。ひとつの工程に6~8時間を要する大仕事です。

その過程で欠かせないのが、水の存在でした。

使用するのは、クロモジが自生する環境に近い湧水。
秦野市は「名水のまち」として知られ、環境省の名水百選にも選ばれるほど、豊かな地下水に恵まれています。

その澄んだ水を使い、時間をかけてじっくりと蒸留していきます。

蒸留の最中、作業場にはクロモジの香りが立ちこめます。

「ずっとこの香りに包まれていると、幸せな気分になるんです」

桐生さんのその言葉からも、この仕事が単なる製造ではないことが伝わってきました。

クロモジの香りは、リナロールを主成分としながら、複雑な成分が重なり合うことで成り立っています。

中でも丹沢のクロモジは、やさしくフローラルで、どこかエレガント。
その印象は「ピノ・ノワールのよう」と表現されていました。

土地の土壌や気候が、その香りの個性を形づくっている。

丹沢の森で育ち、名水によって引き出された香りは、この土地でしか生まれない、唯一無二の一滴でした。

商品の顔となるボトル・パッケージデザインは同じく創業メンバーの中村正道さんが担当。中村さんの友人で無印良品キャンプ場や資生堂をはじめ数々のブランド商品を手がけたグラフィックデザイナーの新村則人氏に依頼し丹沢のクロモジと水の奏でる世界観が表現されています。

「クロモジの気持ち」で山に入る——収穫という対話

取材の日にタイミングよく撮影できたクロモジの花(3月下旬撮影)

平野さん、桐生さんに収穫の様子を伺うとクロモジの香りは、森の中での“対話”から生まれていると感じます。

収穫は、想像以上に繊細なものでした。

アロマウォーターに使う枝は、春から秋にかけて収穫します。
そのなかでも、花の時期はほんの僅かなため、まさに“タイミングがすべて”です。

春のはじまり。
山の空気がやわらぎ、芽吹きが進む頃、クロモジは小さく可憐な花を咲かせます。
淡く、控えめで、それでいてどこか気品を感じさせるその姿は、まさに森にひっそりと佇む存在。

気づかないまま通り過ぎてしまいそうなほどの儚さですが、その一瞬にだけ宿る香りと甘みがあります。

「クロモジは“貴婦人”とも呼ばれるのですよ」

そう表現されるほど、この植物は気難しい存在。
環境の変化を嫌い、育った場所から動かすことが難しい——繊細で、わがままな一面も持ち合わせています。

だからこそ、収穫は“人の都合”では行いません。

「クロモジの気持ちになってみるんです」

その言葉が、この現場のすべてを表していました。

午前中にやわらかく日が差し込み、風が抜ける場所。
クロモジが“気持ちいい”と感じる環境に、育っているといいます。

長年山に入り続ける中で、水の流れや地形が立体的に見えるようになり、どこにクロモジがいるのか、感覚でわかるようになっていく。

それは知識というよりも、自然との関係性の積み重ねでした。

収穫の手もまた、やさしいものです。

業者に任せて一気に伐採することはせず、
「この枝を取れば、もう少し光が入るかな」と、木に語りかけるように丁寧にハサミを入れていきます。

必要な分だけをいただき、未来へつなぐ。

100年という時間をかけて育まれてきた森の一部に触れるということは、
同時に、100年先へつなぐ責任を持つことでもありました。

クロモジの収穫は、“採る作業”ではなく、
自然と向き合い続けるための、静かな対話でした。

日常に、森をひと吹き——香りで整えるウェルビーイング

取材中実際にうちわにふきかけて使う様子

こうして生まれたクロモジ・アロマウォーターは、どのように暮らしの中に取り入れられているのでしょうか。

「特別なことじゃなくて、ほんの少し取り入れるだけでいいんです」

そう話しながら教えてくれたのは、平野君子さん。

たとえば、仕事の合間にひと吹き。
ふっと深呼吸をするだけで、気持ちが切り替わります。

寝る前に枕やシーツにスプレーすれば、やさしい香りに包まれながら、ゆっくりとした時間へ。

外出時にはマスクに。
リビングではカーテンやソファに。

日常の中にそっとなじみながら、香りが空間と気持ちを整えてくれます。

そしてもうひとつ、印象的だった使い方があります。

それは、うちわにひと吹きして仰ぐというもの。

取材中に実際に試してみると、風に乗ってやわらかな香りがふわっと広がり、思わず深く息を吸い込みたくなる感覚がありました。
強く主張するのではなく、あくまで自然に、でも確かにそこにある——そんな距離感が心地よく感じられます。

この香りは、さまざまな場面で求められています。

たとえば、受験を控えた学生が「集中したい」と購入に訪れることもあるそうです。
また、都会でストレスを抱える人からは、「森に帰るような感覚になる」といった声も届いています。

そのやさしく上質な香りは、空間演出としても評価され、カーディーラーやホテルなどでも取り入れられているそうです。

クロモジに含まれるリナロールにはリラックス効果があるともいわれていますが、それ以上に感じたのは、「整える」という感覚でした。

慌ただしい日々の中で、知らず知らずのうちに浅くなっている呼吸。
そこにやわらかな香りが加わることで、意識的に深呼吸するきっかけが生まれる。

「山に行けない日でも、この香りで戻れる気がするんです」

その言葉の通り、このアロマウォーターは単なるフレグランスではなく、丹沢の森と日常をつなぐ“スイッチ”のような存在なのかもしれません。

ウェルビーイングとは、特別なことをすることではなく、日々の中で自分の状態に気づき、整えていくこと。

そのきっかけとして、この一瓶がそっと寄り添ってくれる。

森の香りは、今日の暮らしの中にも、確かに息づいていました

香りがつなぐ、森の未来――はだのブランドに込めた想い

ヤビツ峠レストハウスに並ぶ様々なクロモジを使った商品

丹沢MONが「はだのブランド」に応募した理由。
それは、とてもシンプルで、切実なものでした。

「クロモジという資源を大切にしてくためです」

近年、アロマテラピーの分野でクロモジへの注目が高まる一方で、
山に無断で入り、大きな木を根こそぎ持ち去るような乱獲も起きているといいます。

時間をかけて育まれてきた森の資源が、一瞬で失われてしまう現実。
その状況に、強い危機感を抱いていました。

秦野市の「はだのブランド」が掲げる
「丹沢の杜、名水のまち」というコンセプトは、そうした想いと重なります。

ブランド認証を受けることで、行政や森林組合と連携しながら、
森の資源を持続し後世へと繋いでいく仕組みをつくりたい。

その先に見据えているのは、さらに大きな未来です。

クロモジを守りながら育て、やがては栽培や産業としての広がりも視野に入れていく。
そして、丹沢の恵みを「和ハーブのまち」として全国へ、さらには世界へ発信していくこと。

その挑戦は、まだ始まったばかりです。

クロモジのアロマウォーターは、ただの香りの商品ではありません。

森を大切にしながら採取され、
名水によって引き出され、
人の手で丁寧に届けられる一滴。

その背景には、自然とともに生きるという選択があります。

この一瓶を手に取ることは、森の循環にそっと加わり、自然とともに生きることを選ぶということ 。

“使うこと”が、自然との関わりになる。 そんな新しい価値観をのせて、表丹沢の香りは今日も誰かの暮らしの中で、やさしく息づいています 。

ヤビツ峠レストハウス(丹沢MON 合同会社)
■住 所:秦野市寺山1728-1
■電話番号:0463-73-5688
■営業時間:平日午前9時から午後4時まで
 土日祝日午前8時30分から午後4時30分まで
■定休日:水曜日及び木曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始
■公式ホームページ https://tanzawamon.jp
■公式SNS
Instagram:https://www.instagram.com/tanzawamon/
Facebook:https://www.facebook.com/TanzawaMON
■丹沢MONクロモジ・アロマウォーターオンラインショップ
https://www.amazon.co.jp/stores/%E4%B8%B9%E6%B2%A2MON/page/EEE0CB28-B5B4-4715-B273-99E22EF586B8?lp_asin=B0CGLKGQRV

丹沢日和NATURE ACTIVITY BASE
■住 所:秦野市大秦町1-1小田急マルシェ秦野2階
■電話番号:0463-20-8656
■営業時間:火・木・金 11:00-20:00、土・日・祝 7:30-17:30(最終入店閉店1時間前)
■定休日:月、水、祝翌日
■公式SNS
Instagram :https://www.instagram.com/tanzawabiyori_nab/

はだのブランド
公式HP https://www.hadano-brand.jp/
はだのブランド推進協議会
【事務局】
秦野市環境産業部はだの魅力づくり推進課
〒257-8501 神奈川県秦野市桜町1-3-2
TEL:0463-82-9036
E-mail:info@hadano-brand.jp
【共同事務局】
秦野商工会議所 地域産業振興課
〒257-8588 神奈川県秦野市平沢2550-1
E-mail:info@hadano-cci.or.jp

OMOTANライター 及川 じゅりこ (おいかわ じゅりこ)
【得意分野】 子どもと楽しむ

3年前に子育て環境を重視して都心から秦野市に移住してきた週1都内勤務のほぼリモートワーママです。
やんちゃな息子2人と新しい事に挑戦したり、楽しいスポットにお出かけすることが大好き!OMOTAN子連れスポットのリアルな体験をお届けします。

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