
「はだのブランド」第1回認証品紹介のシリーズ、第三弾では、秦野市上下水道局の「おいしい秦野の水 -丹沢の雫-」を取り上げます。
丹沢の山々に育まれた地下水を原料としたこの水は、2016年に環境省が行った「名水百選30周年記念『名水百選』選抜総選挙」の「おいしさが素晴らしい名水部門」で、全国第1位に選ばれました! しかし、秦野の水の価値は「おいしさ」だけでは語れません。その背景には、市民の命を守るために積み重ねられてきた水との長い歴史があります。
今回は秦野市上下水道局の吉田あゆみさんに、秦野の水道の歴史や水を守る取り組み、「おいしい秦野の水 -丹沢の雫-」についてうかがいました。名水のまち、秦野の誇りが詰まったこの水の魅力をご紹介します。
目次
秦野の魅力があふれる「はだのブランド」とは

秦野の魅力ある商品やサービス、観光資源などを『はだのブランド』として認証し、地域経済の活性化を図るとともに、全国へ向けてその魅力を発信しています。かつては「みっけもん秦野」というブランドネームでしたが、2025年にコンセプトを一新し、再始動しました。
参考記事
・【ライター記事】「丹沢の杜、名水のまち」から生まれる新たな誇り~はだのブランド、再始動~
・はだのブランドHP
名水のまち秦野を支える地下水

秦野が「名水の里」と呼ばれるのは、丹沢山地や大磯丘陵に囲まれた秦野盆地という独特の地形によるものです。この盆地は「天然の水がめ」として、大量の地下水を長い年月をかけて蓄えます。このため、秦野市各地では清らかな湧水が見られます。
地下には水を通しやすい砂礫(されき)層と、自然のろ過作用を果たす火山灰層が重なり合い、雑味の少ない軟水が育まれます。この良質な地下水は市の水道水としても使われ、日常生活の中でおいしい水を味わえることも、秦野ならではの魅力です。
2025年11月には、全国の名水を持つ自治体が集まり、地域の水に関する取り組みを共有する「名水サミット in はだの」も開催されました。名水の価値と重要性を多くの人に知ってもらい、未来に向けて水環境を守る大切さを改めて伝える機会となりました。
参考記事
・【ライター記事】「秦野名水」OMOTAN名水スポット巡りと名水サミットinはだの
「おいしさ」よりも前にあった、市民の命を守る選択

「秦野の水道には、暮らしを守り続けてきた深い歴史があるんです」と吉田さんは、教えてくださいました。
水道が整備される以前、当時の秦野の人々は、曽屋神社の境内に湧き出る清泉を用水路に流し、生活用水として利用していました。しかし水の取り合いが起きるようになり、さらに衛生面の問題からコレラが発生し、多くの犠牲者が出たといいます。こうした状況を背景に、きれいな水を安定的に供給する必要性が高まりました。
そこで、住民たちが自ら計画し、明治23年(1890年)3月に「曽屋水道」が給水を開始しました。全国的にも極めて早い時期に建設された近代水道の一つで、鉄管より比較的安価で耐久性の高い陶管を使用した簡易陶管水道・自営水道としては、日本初ともいわれています。



この水道は、技術的な助言こそ県に求めたものの、当時としては珍しく資金の捻出や計画、工事はすべて住民主体で行われました。曽屋水道は、住民の汗と努力の結晶であり、その遺構は今も秦野にとって貴重な共有財産として、曽屋水道記念公園に残されています。
一方で、秦野の地下水は今日まで常に安定して供給されてきたわけではありません。昭和後半には、水質が悪化した時期もありました。しかし、市民と行政が一体となって改善に取り組んだ結果、地下水の環境は徐々に回復し、2004年には「名水復活」を宣言しました。
現在も、秦野名水を「守る・育てる・使う・伝える」ためのさまざまな保全事業が続けられています。
例えば、水田や休耕田を活用して農業用水を引き込み、地下に浸透させる「育てる」取り組みや、地下水浄化装置を使用して水質を改善する「守る」取り組み。
湧水は水質基準が定められていませんが、市内10カ所の水汲み場では、水道水の安全性を確認するための水道水質基準などに則った14項目を調査する「使う」ための取り組みも行われています。
また、名水スポット巡りのイベントや小学校での水に関する出前講座など、市民参加型の活動を通じた「伝える」取り組みによって、水を大切にする意識を次の世代へとつないでいます。
こうした事業により、秦野名水は市民のかけがえのない財産として守られています。

暮らしの中で飲まれてきた水が商品になるまで
こうした歴史の中で受け継がれてきた秦野の水を、何とか全国にPRできないか──それが「おいしい秦野の水 -丹沢の雫-」開発の出発点でした。ちょうどその頃、日本各地で名水を使ったペットボトル商品が次々と販売され始めており、当時の市の資料によると秦野市でも同様の取り組みができないか、検討が進められました。
当初は、地下水を最低限の処理だけで詰めるナチュラルウォーター案も検討されました。しかし、衛生面の課題を踏まえ、水道局として「安全性を最優先すべき」という結論に至ります。
そこで選ばれたのが、水道水と同じ、ろ過・沈殿・加熱殺菌等の工程を経た水をボトリングする方法でした。 「水道水でも、こんなにおいしい」その自信を正面から伝えたいという思いから誕生したのが、「おいしい秦野の水 -丹沢の雫-」です。
「おいしい秦野の水 -丹沢の雫-」のまろやかなおいしさ
「おいしい秦野の水 -丹沢の雫-」は、秦野市羽根地区で地下水をくみ上げ、浄水した水を使用しています。製造過程で塩素を除去したうえでボトリングされており、地下水本来のおいしさを楽しめるのが特長です。

「硬度は89mg/Lの軟水で、まろやかな口当たり。日本人の味覚に合いやすく、お茶やコーヒー、水割りにも適しています。素材の風味を引き立てるため、料理との相性もぴったりです」と吉田さん。
また、備蓄用飲料水としての役割も担っており、賞味期限は製造月から2年間です。普段の暮らしで活用しながら、非常時の備えとしても安心です。こうした品質が評価され、2008年10月の製造・販売開始当初は、年間約4万5,000本だった出荷本数は、2024年には21万6,000本にまで増加しました。さらに売上の一部は、丹沢の水源林保全活動に使われています。
現在、秦野市内では、市役所内及びカルチャーパークにある自動販売機をはじめ、秦野市観光協会、JAはだのじばさんず、一部のスーパーやコンビニエンスストアなどで購入可能です。市外でも、羽田空港第1ターミナル内の直産館や、そごう横浜店のアンテナショップなどで販売され、秦野の名水を広く発信しています。また、秦野市のふるさと納税の返礼品としても選ばれており、市外の人が秦野の水に触れるきっかけの一つとなっています。
これからも届けたい、秦野の名水

丹沢の山々に育まれ、長い年月をかけて蓄えられてきた秦野の地下水。そしてその地下水をくみ上げ、暮らしの水として届けてきたのが水道です。これらは、先人たちが命を守るために大切に支え、築き上げてきた財産です。
その恵みを、日常の中で気軽に味わえるようにしたのが「おいしい秦野の水 -丹沢の雫-」。普段の飲み水としてはもちろん、丹沢登山や散策のお供に。またいざという時の備えとしても心強い存在です。秦野の自然と水道の歴史が育んできた名水を、ぜひ味わってみてくださいね。
■商品名:おいしい秦野の水 -丹沢の雫-
■価格:オープン価格
■問い合わせ先:神奈川県秦野市上下水道局 営業課 0463-83-2111




