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木のぬくもりを暮らしに   秦野市の「木のある暮らしづくり」取材レポート!

秦野市森林ふれあい課「木のある暮らしづくり」

秦野市は、表丹沢や渋沢丘陵に抱かれる里山のまち。市域の半分以上を森林が占め、人々の暮らしは昔から森と深く結びついてきました。かつて秦野を支えた「たばこ産業」の終焉や、生活スタイルの変化により里山が利用されなくなると、森の循環サイクルが弱まり、環境や自然災害への影響が懸念されるようになりました。そうした背景のもと始まったのが、秦野市の「木のある暮らしづくり事業」です。
今回は、秦野市役所森林ふれあい課にお伺いし「もり(森林)」と「さと(里山)」の両輪の好循環を生むことを目的とした「木のある暮らしづくり」の取り組みについてお話を伺いました。また、秦野の間伐材を使った素敵な木工製品を手がける「あしがら丸太細工」さんも取材しました!

森林の循環サイクルとは?

参照:令和3年度森林・林業白書(農林水産省ウェブサイト:https://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/hakusyo/r3hakusyo/zenbun.html)

 森林の循環サイクルとは「木を植えて、育て、資源として活用し、再び木を植える」という一連の活動が回ることで、森林が健康で持続可能に機能する仕組みのことです。

葉たばこ産業が盛んだった時代の秦野では、伐採した木を葉の乾燥用の薪に使い、落ち葉を肥料として利用するなど、木とともに暮らす循環型の営みがありました。しかし、昭和59年に葉たばこ栽培が終了し、木を使う機会も減少。そうした時代背景の中で、里山の手入れは次第に行き届かなくなったと言います。

森林が放置されると、木が過密に生え、倒木や土砂崩れなどのリスクが高まります。また、若い木が育たずCO₂吸収量が減るなど、森林本来の機能も低下してしまいます。さらに、里山の境界が曖昧になることで、鳥獣による農作物被害も増えるおそれがあるとも言われます。

植樹祭の様子(秦野市役所・森林ふれあい課ご提供)

そこで秦野市では、民間ボランティアや森林組合、事業者と協力しながら、木を植える「植樹」、木を育てる「育樹」、木を利用する「活樹」の循環を築き、森林と里山の健全化に努めていますと、ご説明いただきました。

「木のある暮らしづくり事業」ー人生の節目で木と触れ合う機会を

木とふれあう取組み「お祝いの品」(一部)

令和6年度に秦野市役所 森林ふれあい課が中心となってスタートしたのが「木のある暮らしづくり事業」。市民が人生のさまざまな節目で木に触れ、ぬくもりや森林・里山の大切さを感じられる機会を提供する取り組みです。

具体的には、出生届を提出した人に「ヒノキ玉」、中学校では「木の紙」を使用した卒業証書、婚姻届を出した人に「ペアコースター」、敬老祝いに「写真立て」をプレゼントするなど、人生の節目に木と触れ合う機会を設けています。 また、市内の公共施設などにも、秦野産の木で作られたイスやベンチが設置され、市民が自然と木に親しめる環境づくりが進められています。

秦野市役所森林ふれあい課担当細野(ほその)さん

森林ふれあい課の細野 慈太(ほそのちかた)さんは「実際に木に触れる機会を増やすことで、その良さを感じてもらい、秦野の森林や里山への関心を高めてもらえたらと思っています」と話します。

秦野の間伐材を全国へ あしがら丸太細工さんの挑戦

あしがら丸太細工の手押し車(犬のカタカタ。ふるさと納税返礼品)

次に訪ねたのは、秦野で木工業を営む「あしがら丸太細工」代表の小島康弘(こじまやすひろ)さん。秦野市の敬老祝いのフォトフレームや、ふるさと納税の返礼品などを手がけています。

秦野出身の小島さんは、学生時代から山登りが大好きで、北アルプスや南アルプスを登り、冬はスノーボードのインストラクターもされていたほどの自然派。地元に戻ってからは神奈川県の公務員として林業に携わり、森を育て、伐採し、木材を活用する仕事をしていました。

チェーンソーで丸太を切る小島さん(あしがら丸太細工ご提供)

その経験の中で小島さんは「森を守るには、木を“使う”ことが大切」だと実感したと言います。現場では「一生懸命に木を育てたのに、その木が使われない。誰も買ってくれない」という声をよく耳にしていたそうです。間伐材が多くある一方で、「木の家に住みたい、木工製品を使いたい」というニーズがうまくつながっていないことを感じました。

木工業会では入手が楽で扱いやすい外国産材を使うことも多いそうですが、小島さんは「地元・秦野の森から生まれた木を大切に使うこと」にこだわっています。

「地元秦野の森から生まれた間伐材をどう活かすか、試行錯誤する過程が楽しいですね」と語る小島さん。今では全国各地から注文が入るほど人気を集めています。

暮らしの中に、木のぬくもりを

秦野市の「木のある暮らしづくり事業」で敬老祝いに贈られるフォトフレームは、小島さんの作品です。上部の木肌にはあえて凹凸を残し、表丹沢の稜線をイメージしています。一つとして同じものはなく、それぞれの木が持つ表情が楽しめます。

一つ一つ手作り「敬老祝いのフォトフレーム」
フォトフレームは秦野産のヒノキを使用

あしがら丸太細工の木工製品は、香りの良い秦野産ヒノキを中心に、桜などの樹種をアクセントとして使用。木の香り、手触り、そして「コトコト」と鳴る優しい音。どれもプラスチックにはない温かみがあります。

あしがら丸太細工の「ドラムベア」(どんぐりを引っ張ると熊がドラムを叩きます)
丸太の木目・形を活かしたテープカッター、小物入れ、どんぐりの笛

「木を削っている間も、木の香りに包まれながら、子どもたちの笑顔を思い浮かべています」と小島さん。木工に込められた愛情と地域への思いが伝わってきます。

木工のおもちゃが子どもに大人気!(あしがら丸太細工ご提供)

「秦野の木で作った製品を、ぜひ手に取ってみてください。見て、触れて、香って、五感で木のぬくもりを感じてもらえたら嬉しいです」と温かなメッセージを寄せてくださいました。

筆者あとがき

秦野市の「木のある暮らしづくり」は、人生の節目で木に触れる機会を設けることで市民の環境への意識を高め、森林や里山を守る循環を生み出す取り組みです。取材を通して「木を使うこと=森や里山を守ること」だと、心に深く刻まれました。

秦野移住組の筆者ですが、豊かな自然や山に囲まれた秦野市の市民だからこそ、未来に向けて意識を少しずつ変えていくことが大切だと感じました。

また、あしがら丸太細工の小島さんの木工製品を実際に手に取ると、ヒノキの香りがふわっと広がり、優しい手触りに心がほっと和みました。目で見るだけではわからない、木の魅力を感じられる体験でした!

秦野市の森林ふれあい課が取り組む「木のある暮らしづくり」、そしてあしがら丸太細工の小島さんの活動にも、ぜひご注目してみてください。

▼秦野市森林ふれあい課「木のある暮らしづくり」https://www.city.hadano.kanagawa.jp/www/contents/1710995670502/index.html
「木のある暮らしづくり」を応援していただけるガバメントクラウドファンディングを実施中!!詳細はURLをご確認ください!
https://www.furusato-tax.jp/gcf/4337

▪️施設名:あしがら丸太細工
▪️Instagram: @marutazaiku
▪️ネットショップ:
クリーマ https://www.creema.jp/c/marutazaiku
ミンネ https://minne.com/@marutazaiku

OMOTANライター 河村 知香 (かわむら ちか)
【得意分野】 登山、キャンプ、ハーブ、旅企画

山旅専門の会社で企画手配や添乗の仕事をしていました。秦野市に移住して約3年、丹沢の主要な山はすべて登り、庭でハーブを育てたり、夫婦でキャンプをしたりと、丹沢の奥深い自然とゆとりのある環境を満喫しています。山の経験や移住者目線を生かして、表丹沢の魅力をお届けします。
Instagram:@kawamura.chika

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