
昔から秦野の人々の生活と共にあり、重要な資源でもあった森林。昨今は、森林を観光資源としても活用し、秦野を「森林観光都市」として全国にアピールする動きが広がりを見せています。
緑豊かな丹沢山系の森林の魅力を訪れた方に存分に味わってもらうためには、森林の整備をしっかり行っていくことも重要です。
令和7年10月から始まった菜の花台園地の整備も、いよいよ令和8年3月で完了します。ウッドチップの舗装など、新しく生まれ変わる展望スポットは必見ですよ!秦野市内や富士山、相模湾が一望でき、秦野市内の観光スポットとしてこれまでも高い人気を誇ってきましたが、整備後はさらに園地からの景色が良くなるとのことで、楽しみですね。
今回は、そんな菜の花台園地の整備に密着していきます!
目次
森林整備への思い。森林と里山が健全な状態へ戻ることを目指して

まずは、整備を担当している秦野市森林ふれあい課の、腰塚雅治さんと細野慈太さんに
お話を伺ってきました。なぜ整備をするのか、森林整備にかける思いまで語っていただきます!
「以前、表丹沢総合ホームページ『OMOTAN』の『木のぬくもりを暮らしに 秦野市の「木のある暮らしづくり」取材レポート!』でもお話させていただきましたが、秦野にとって森林は昔から生活と共にありました。しかし、たばこ産業の終幕や生活様式の変化で、日常で木を使うことが少なくなりました。使われないことで手入れが行き届かなくなった森林や里山は、一般の方では対処できないほどに荒れてしまいます。そうなると、安全面だけでなく鳥獣による農作物への被害や木の高齢化によりCO2の吸収量が減少するなど、新たな課題が出ることもあるんです。
私たち森林ふれあい課は、そういった森林や里山の整備を通じて、森林と里山が再び健全に、市民の生活と共にある状態に戻るよう取り組んでいます。観光スポットとしての役割も大きい菜の花台園地では、さらなる魅力も引き出せるような整備をしていきたいです」 手入れがされないことで様々な問題が起きている森林や里山に行政が介入し、適切な整備をしていくことで、さらに観光地としての魅力を引き出すことにつなげていけるのですね。
木を植えて育てて、木材として活用し循環させていく『活樹』への取り組み

「以前までは、CO2の吸収や水源かん養など森林の持つ色々な機能を維持するために、とにかく整備をしていたんです。最近では、ただ整備をして終わりではなく、そこからさらに『活樹(かつじゅ)』として森林資源を循環させるところまでを意識しています。そのためにもまず木と触れ合い、森林資源の大切さを感じてもらいたいということで、始まったのが〝木のある暮らしづくり事業〟です。
今回整備を行う菜の花台園地のような、森林がある観光地もまさにそうですね。訪れることで森林の魅力に触れてもらって、そこから森林の機能や整備の大切さを知ってもらう。木を植えて、育てて、使っていく循環がしっかりすると、常に手入れがされている状態が続くようになります。植えて終わりではなく、いかに木を活用して森林資源を循環させていくかということが大事なんです」
整備をして森林が美しい状態になることで、自然と観光につながる。逆もしかりで、観光地として手入れをしていくことが活樹につながり、また次の整備につながっていく。
お話を聞いて、森林整備と森林資源の循環をしっかりすることが、秦野市がいま掲げている〝日本一の森林観光都市〟への第一歩なのだと強く感じました。
弘法山、頭高山での整備経験を菜の花台園地に生かす
秦野市森林ふれあい課では、今回の菜の花台園地の前から継続的に秦野市内の整備を行っています。過去に行った弘法山と頭高山の整備の写真も今回見せていただきました。
弘法山の整備の様子

写真は、令和4年度に整備が行われた弘法山の広場の様子です。整備前は樹木が鬱蒼(うっそう)と生い茂り、空がかろうじて隙間から見えているような状態でした。

整備後の同じ場所の写真がこちら。丹沢山系はもちろんのこと、富士山の雄大な姿も確認することができます!伐採を行ったことで、視界も広く、すっきりと明るい雰囲気になり、何度でも足を運びたくなるような場所に生まれ変わっています。
頭高山の整備の様子

こちらは令和5年度に行われた頭高山の整備前の様子です。山頂もこのような状態で、せっかく登ってもなかなか景色を楽しむことができなかったとのことでした。

こちらも劇的に変わったビフォーアフターです。丹沢のやまなみや酒匂川方面の伸びすぎていた大木を大胆に伐採したことで、景色を堪能できるようになりました。整備後には植樹祭を開催し、多くの参加者が苗木を植えることで森が若返りました。
そして、東屋の下の部分にも注目。なんと、整備の際に伐った木をウッドチップに加工して敷いているんです。ここにも、活樹の意識が根付いています。
表丹沢ではどうしてもヤマビルによる被害が気になりますが、ウッドチップを使用することにより、ヤマビルが近づけなくなりゆっくり休息ができる効果もあるのだとか。ふかふかとしたウッドチップでリラックスもでき、まさに一石二鳥ですね! 「今度整備を行う菜の花台園地でも、伐採した木を使ったウッドチップで舗装する予定なんです。よかったら見にいらしてください」と、森林ふれあい課の皆さん。という訳で、実際の整備の様子を特別に見学させていただきました!
森林観光都市へのさらなる一歩。菜の花台園地の整備に密着

今回整備が行われる菜の花台園地は、秦野市街からヤビツ峠へ向かう途中にあります。標高はなんと570m。展望台からは丹沢山系に留まらず、富士山から江の島まで拝むことができます。駐車場も備えており、市街地の夜景もきれいに見えることから、市内でも人気の高い観光スポットです。

市街地側にかけては、視界をさえぎっていた木々の伐採や、下草や藪の刈り取りなどがすでにされており、だいぶすっきりとした光景が広がっていました。市街地の様子だけでなく、遠くには江の島、大島なども見え、思わず感嘆の声をあげてしまいました。 手前には、地元の北小学校の児童たちによって植樹されたミツマタやウツギの姿も確認できます。

今回のウッドチップの整備では、石のベンチに沿って黒いシートを敷き、その上に舗装を施していきます。縁には細い丸太のような縁木(えんぎ)が置かれていますが、こちらも森林整備で伐採されたヒノキを使っています。
ここにウッドチップが舗装されると、憩いの場所となること確実ですね!

ウッドチップは、そのまま地面に撒くと水分量の関係で保湿されてしまい、むしろヤマビルのすみかになってしまいます。そのため、使用するウッドチップには、ヤマビル対策として環境にやさしい特殊なボンドを練りこんでいます。今回の整備には、林業の先進地である岐阜県の森林組合連合会の方々が作業に協力しており、このボンドも岐阜県で開発されたものだそうです。

まずは、レーキ(熊手)でウッドチップを素早くならしていきます。作業員の方から、「固める前のこの時点で、目で見てもまっすぐ水平にならすことが、きれいに仕上げるコツです」と教えていただきました。

次に、転圧棒を使ってしっかり固めていきます。圧縮が終わった奥側とこれから行う手前側と、目に見えて違いがわかりますよね!
完全に固まるには二週間ほどかかりますが、この日は天気も良く、高台にある園地には陽がよく届いて乾きやすいそうで、作業員の皆さんが手早く作業されていたのが印象的でした。

最後に、細かいところをコテのような器具を使って丁寧に調節しながら、さらに圧縮していきます。筆者も少しだけ触らせてもらいましたが、ウッドチップの弾力性にびっくりしました!しっかりと敷き詰められています。すべての工程がほぼ手作業で行われているので、改めて大変さを実感しました。

実際に舗装されたウッドチップの上を歩いてみたい!ということで、令和6年の夏頃に施工された、比較的新しい緑水庵のウッドチップ舗装を見に行ってきました。固まったあとはさらに弾力性が増していましたが、歩くとふかふかで柔らかく、これならハイキング時も足に負担はかかりません。菜の花台園地のウッドチップのお披露目がより楽しみになりました。
林道へと繋がる散策路。径路整備の過程
また、今回の整備で、駐車場横の階段を下りた先の径路がきれいで安全な散策路に生まれ変わります。

写真は、菜の花台園地の駐車場を入ってすぐ左手、下に伸びる階段を下りたところの施工前の様子です。この先の羽根林道や里山ふれあいセンターへつながる道ですが、ご覧の通り伸びきった樹木に覆われ、獣道のような状態でした。下草や藪も生え放題で、ゴミの不法投棄も後を絶たなかったそうです。

筆者たちが訪れた際は、ここまできれいになっていました。こちらはまだ施工途中のため、今後はこちらにも縁木を設置し下草の処理を進めることで、さらに歩きやすくなるそうです。
森林ふれあい課の皆さんは「径路の整備によって利用する人が増え、こうして整備されてきれいになることで不法投棄が少しでも減るよう願っています。
また、せっかく里山ふれあいセンターが近いので、森林セラピーや林道ツアーなどのイベントを通じて、多くの方々に秦野の魅力を感じてもらいながら、いかに森林整備の大切さを伝えていくか、日々考えながら取り組んでいます」と話します。 ここでも、点でなく、一人でも多くの方と一緒になって面として回していくという意識を強く感じました。
森林観光都市としての整備の取り組みが、秦野の価値をさらに全国へ

今回一番心に残ったのは、ただ木を伐るだけでなく、その先の未来につなげる「循環」を大切にする『活樹』という考え方でした。
全国でももちろん森林整備は行っていますが、秦野市のように「森林観光都市」という旗を掲げて、一事業として整備をそのまま街の魅力に変えていこうとする取り組みは、実はあまり例がないそうです。 森林ふれあい課の皆さんが進めるこの『活樹』の輪が広まることで、単に観光客が増えるだけでなく「適切な整備こそが、森林を魅力的な観光資源に変える」ということを、全国へ良い例として発信していける可能性も大いに秘めていると感じました。
木を活かすことは、人を活かし、秦野の街そのものを活性化させていくことでしょう。整備によってどんどん美しく変わっていく菜の花台園地を実際に目の当たりにしながら、そんな「良い循環」がきっとこれからもどんどん広がっていくのであろうと、強く感じる取材でした。
■施設名:菜の花台園地
■住 所:秦野市羽根1079-5
■交通アクセス:
<公共交通>
小田急小田原線 秦野駅より『バス』【秦21】「ヤビツ峠行き」で約30分、「菜の花台」下車
<車>
・新東名高速道路 秦野丹沢スマートICより約30分
・東名高速道路 秦野中井ICより約30分
■駐車場: 23台(無料)
■施設情報
OMOTANホームページ:
https://omotan-hadano.jp/spot/%E8%8F%9C%E3%81%AE%E8%8A%B1%E5%8F%B0%E5%9C%92%E5%9C%B0/
キッチンカー@菜の花台の情報はOMOTANホームページ内の「お知らせ」をご覧ください
https://omotan-hadano.jp/news/news/
※OMOTANインスタグラムにも毎月予定をアップしています
https://www.instagram.com/omotan_hadano/
【得意分野】 インタビュー、グルメ
フリーライターの那保です。国内旅行業務取扱管理者、添乗員資格有り。神社好き、シンガプーラ飼いの猫好き、美味しいものも大好き。
神奈川へは移住組、その多彩な魅力にまんまとハマってます。
表丹沢を駆け回れるようになるべく、目下体力づくりに奮闘中。インスタでは表丹沢ほか、魅力的な写真を投稿しているので、ぜひ覗いてみてください!
Instagram:@nyao_muu




