表丹沢を代表する山の一つ「鍋割山」といえば、登山をする人であれば一度は食べてみたいと憧れる鍋割山荘の「鍋焼きうどん」が有名です。丹沢登山の玄関口である「大倉登山口」から山頂まで登りきった後に食べる熱々の鍋焼きうどんは、一口食べたら忘れられないおいしさです!
危険箇所が少なく初心者向けと紹介されることも多くありますが、大倉登山口から往復の距離が約16km、コースタイムは約6時間30分と長いので意外にきついという声も。体力が必要とされる登山コースです。
今回は、秦野市が認定したOMOTANガイドの青木香興(あおきたかふさ)さんと、地元・秦野の小学校に通う5年生で、青木さんの息子・悠貴(ゆたか)君と一緒に登ってきました!
目次
大倉登山口から山頂までの往復・初級コースを歩く
鍋割山の登山口「大倉登山口」までは、小田急小田原線「渋沢駅」からバスで「大倉」まで約15分でアクセスできます。鍋割山にはいくつか登山コースがありますが、今回は一番スタンダードな大倉登山口から単純往復コースを歩きます。
ガイドを務める青木香興さんは、秦野市が認定した「OMOTANガイド」。OMOTANガイドとは、秦野市にまつわる歴史や文化、自然の基礎知識にくわえ、ガイドとしての心得やコミュニケーション、心と体の状態に関わるウェルビーイング、SDGsといった講座を受講し、認定試験(実地試験)に合格した人たちで、表丹沢の「本物の魅力」を伝え、お客様をおもてなししています。
青木さんは、登山やトレッキング、トレイルランニングなど山登りに精通しており、アウトドアマウンテントレーナー(一般社団法人日本アウトドアトレーニング協会)の資格や、ウォーキングアドバイザー(一般財団法人日本ランニング協会)、ネイチャーゲームリーダー(公益社団法人日本シェアリングネイチャー協会)の資格などを保有しています。(今回の大倉登山口から鍋割山までの単純往復コースも、子どもと一緒に登る「OMOTAN親子 de 登山部」という申込制の講座を開催してご案内しています。
県立秦野戸川公園横の大倉バスターミナルで、朝8時にOMOTANガイドの青木さんと合流すると、この日は休日ということもあり臨時便が何台も運行される大盛況ぶり。11月中旬で、紅葉狙いの人も多かったのかもしれません。
お手洗いを済ませて、登山届の提出を確認して出発します。この日、私はすでにインターネットのサービスで提出をしていましたが、レストハウス前にある登山届提出ボックスで提出することもできます。
出発してすぐに、塔ノ岳方面・鍋割山方面と登山口が分かれています。
今回は鍋割山方面へ、分かりやすい標識を見ながら進みました。民家を通り抜けてシカの侵入防止のゲートを通り、いよいよ山道へと入ります。
悠貴君も気合十分です!
大倉から二俣までは林道をひたすら歩く
鍋割山登山で最も長い区間である、登山口の大倉から二俣まではひたすら長い林道を歩きます。標高差も少なくゆるやかな坂道なので、ハイキング感覚で会話を楽しむ余裕があるほどです。
西山林道の分岐を発見しました。「表丹沢県民の森方面に下ると落差15mの『黒竜の滝』に寄り道することもできますよ」と青木さん。登山道周辺の自然情報も知識が豊富で、登山コースの裏情報などを聞きながら歩きます。
途中、3回ほど沢を横切ります。橋がかかっているところもあれば、無いところも。足がじゃぽんと沢の水の中に入ってしまい、悠貴君のテンションがやや下がってしまいました。雨の日の後など、増水時には注意したいですね。
気を取り直して歩を進めると、いつも水の入ったペットボトルが大量に並べてある場所にでます。これは、鍋割山荘の鍋焼きうどんを作るときに使う水を登山者がボランティアで歩荷できるように用意されているのですが、この日はなんとペットボトルがすべてありませんでした!
歩荷を想定して気合いを入れて大きめのザックで挑んだ筆者でしたが、すでにたくさんの登山者が歩荷してくれていたようです。ちょっと残念なような、この先の道のりを考えるとほっとしたような…。
ペットボトルの水の荷揚げはあくまでボランティア。歩荷できなくても鍋焼きうどんは食べられますのでご安心を。体力に自信がある人はチャレンジしたいですね!
※ライターメモ
歩荷(ぼっか)とは、荷物を背負って山越えをすることで、主に山小屋などに荷揚げをすることや職業を指します。鍋割山荘の店主は、なんと100kg超の歩荷記録を持ち「伝説の歩荷」と呼ばれていたそう!
二俣から後沢乗越(うしろさわのっこし)へ
OMOTANガイドの青木さんからストックの使い方や、山での疲れない登り方などのレクチャーを受けます。靴の裏全体が地面と接地するようにできるだけ歩幅を狭く歩くことや、お尻の外側や股関節周りを意識して前屈にならないように姿勢を整えたりなど、実際に登りながら歩き方のコツをつかみます。
悠貴君は急斜面の山道になるといきなり元気に!身軽にサクサク登っていくので、私たちも置いていかれないように必死に登りました。
紅葉の尾根道を歩いて鍋割山の山頂へ
後沢乗越まで登り切ると、あとは尾根道に沿って山頂を目指していきます。ここからさらに標高差約700m以上あるので、まだまだ先は長いです。
たくさんの人とすれ違いましたが、皆さん疲労している様子。悠貴君もまだまだ続く尾根に備えて無理をせず、休憩を重ねます。行動食としておやつも取りつつ、ゆっくりと登ります。
標高が上がるにつれて紅葉が進んでいくので、黄色や赤に染まる秋ならではの景色が楽しめました。そろそろ、紅葉のピークでしょうか。
悠貴君から「あと何メートル?」「あと何分?」と確認する回数が増えてきました。
ガイドの青木さんや、すれ違う登山者の方々に「あともう少しだよ!」「うどんが待っているよ!」と励まされながら、ついに山頂が見えてきました。
鍋割山に登頂!鍋焼きうどんは食べられるのか!?
鍋割山の山頂に到着すると、すぐに目に入る鍋割山荘の長蛇の列。今回のような秋シーズンの休日は絶好の山日和でもあるので、さすがの人気ぶりです。
この行列に心が折れそうになりつつも、絶対に鍋焼きうどんを食べたい!という気持ちで負けじと並びました。風も吹いていて気温も低いので、ダウンやレインウェアなどありったけのものを着込みます。「なかなか進まない」「目の前で売り切れたらどうしよう…」「食べられますように…」など、参列者の祈るような声を聞きながら、徐々に列は進んでいきます。
いよいよ次は私たちの番、と思いきやなんと私の目の前で営業中の札がひっくり返されました。ですが、「列に並んでいる人だけで今日は終わりです」の一言。よかった〜。
鍋割山荘の人気の鍋焼きうどんは、きのこ類やお野菜・天ぷら・卵も入っていてボリューム満点です。熱々で少し甘めのお出汁のスープが疲れた体に染み渡ります。お好みで七味もあります。
ここまで登ってきて良かった〜、並んで良かった〜としみじみ思いながら、熱々の鍋焼きうどんを頬張り至福の時間を過ごしました。
※ライターメモ
今回は12時前から1時間以上並んで無事に鍋焼きうどんにありつけました!休日は13時頃に売り切れてしまうこともあるようなので、お目当ての人は、早めの到着を心がけたいです。万が一に備えて、行動食などは多めに用意しておくようにしたいですね。鍋焼きうどんの値段は1500円(税込)でした(2024年11月現在)。
※鍋割山荘の情報はこちらをご確認ください。
晴れていれば山頂から富士山も!
この日は曇っていて見えませんでしたが、晴れていれば山頂から富士山や南アルプスも見渡すことができます。また、反対側には相模湾や三浦半島、房総半島、また秦野の市街地の景色も広がります。
テーブルやベンチも多く設置されているので、山小屋の外に鍋焼きうどんを運んで、座って景色を見ながら食べることができます。
山頂にはトイレがありますが、使用済みのトイレットペーパーはお持ち帰りなのでご注意ください。また、協力金として100円のチップがあるので忘れずに。
下山は日没前までに
山頂で景色と鍋焼きうどんを堪能した後は、大倉まで下山しなければなりません。秋が深まるにつれて、日が落ちるのも早くなりますので下山時間には注意したいですね。
往路と同じコースですが、登りでは必死すぎて見逃していた景色も多いので、新鮮な気持ちで下ります。登りに比べるとサクサクと下山できますが、実は下山時のほうがケガが多くなるので慎重に足を運びました。
途中、悠貴君の足が張ってしまい痛くなるハプニングがありました。OMOTANガイドの青木さんがすかさず「どのあたりが痛いの?」と声をかけて、負担を軽くするストレッチとマッサージを施す場面がありました。突然のハプニングも、OMOTANガイドが一緒なら安心ですね。
長い登山コースを終えて大倉に戻ってきました。秦野の街並みが見えるとほっとします。
県立秦野戸川公園のバスターミナルに到着!翌日に疲れを持ち越さないようにしっかりと整理体操をして、解散しました。
※記事中の写真は、取材当日に撮影したもの以外の過去画像も使用しています。
■登山コース概要
大倉~二俣~後沢乗越~鍋割山(往復)
歩行距離:約16km 歩行推定時間:6時間25分
※丹沢ビジターセンター・ホームページより
https://www.kanagawa-park.or.jp/tanzawavc/course.html
<アクセス>
大倉バス停:小田急小田原線「渋沢駅」から【渋02】「大倉行」神奈川中央交通バス(約15分)
■OMOTANガイド 一覧
https://omotan-hadano.jp/omotanguide/
■OMOTANガイド 青木香興さん
https://omotan-hadano.jp/omotanguide/aokitakafusa/
Instagram:https://www.instagram.com/tak.a_omotan_mountain_guide
【得意分野】 登山、キャンプ、ハーブ、旅企画
山旅専門の会社で企画手配や添乗の仕事をしていました。秦野市に移住して約3年、丹沢の主要な山はすべて登り、庭でハーブを育てたり、夫婦でキャンプをしたりと、丹沢の奥深い自然とゆとりのある環境を満喫しています。山の経験や移住者目線を生かして、表丹沢の魅力をお届けします。
Instagram:@kawamura.chika