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【ライター記事】表丹沢の登山・クライミング拠点『神奈川県立山岳スポーツセンター』取材レポート!施設概要と秋山シーズンの注意点・おすすめルート

神奈川県立山岳スポーツセンター

 神奈川県立山岳スポーツセンターは、丹沢の山々に囲まれた神奈川県立秦野戸川公園の中にある施設です。塔ノ岳・鍋割山・三ノ塔など、表丹沢の人気登山コースの入口に位置し、登山・沢登り・クライミングの拠点として最適な場所にあります。
 登山好きで秦野市に移住して3年以上になる筆者ですが、実はこれまで利用したことがなく、今回の取材で「こんな立派な施設があったのか!」と驚きました。施設見学を通じて、多様な利用方法を知り、さらに秋山シーズンを迎えるにあたっての登山の注意点やおすすめルートを伺いました。

神奈川県立山岳スポーツセンターとは?

県立秦野戸川公園の自然に囲まれた立地

自然豊かな県立秦野戸川公園の中にあります

 山岳スポーツセンターは、秦野戸川公園のビジターセンターや大倉駐車場・バス停から「風の吊り橋」を渡り徒歩7分。車利用の方は諏訪丸駐車場が最寄りで、徒歩3分ほどです。クライミングウォールが目印となり、すぐに施設に到着しました。

登山訓練所を継承し、知識と技術を普及

引き継がれた「神奈川県立丹沢登山訓練所」の看板

 山岳スポーツセンターは、昭和41年から利用されてきた「神奈川県立丹沢登山訓練所」が老朽化により閉鎖された後、その後継施設として平成9年に開設されたそうです。登山教室・沢登り教室・クライミング教室・山岳遭難対策・指導者養成などを通じて、安全登山の普及活動を継続しています。

 現在は主に神奈川県山岳連盟が主体となり、登山教室(沢登り・岩登り・冬山・縦走)、クライミング教室(リード・スピード)をそれぞれ年14回開催。県内外から幅広い登山者が参加しています。さらに救急法講習会や搬送訓練、登山口での注意喚起活動など、安全啓発にも力を入れています。

登山教室の様子(山岳スポーツセンター提供)
沢登り教室の様子(山岳スポーツセンター提供)
スピードクライミング教室の様子(山岳スポーツセンター提供)

山岳競技に対応する「3つの壁」

高さ15mある立派なクライミングウォール(左がリード、右がスピード)

 公園内にはスポーツクライミング競技の「リード」「スピード」「ボルダリング」3種目すべてが練習できるクライミングウォールが整備されています。これは全国的にも珍しい存在だといいます。

  1. リードウォール:平成10年「かながわゆめ国体」で使用。高さ15m。
  2. スピードウォール:令和2年、東京オリンピックの事前練習場として屋外に新設。
  3. ボルダリングウォール:隣接する「はだの丹沢クライミングパーク」内に整備。一般利用可能。

なお、リード・スピードの屋外壁は有資格者、または教室参加者のみ利用可能とのことです。

ハングアウトした壁は難しそう!(角度調整可能だそうです)
はだの丹沢クライミングパークの建物(中にボルダリングウォールが!)
室内のボルダリングウォール

宿泊・研修・合宿にも対応

 施設には4人部屋が11室あり、最大44名が宿泊可能。一般にも開放されており、登山前後の宿泊や、公園でのレジャー後の利用も人気があるそうです。

レストランはなく自炊が基本となるため、厨房・調理器具・食器類がそろっています。

和室の一例
洋室の一例
共用の洗面台、シャワー設備(男女別)
自炊のできる厨房(お皿や調理器具などもそろっています)

 冷暖房完備の研修室もあり、オリエンテーリングや机上講座、レクリエーション活動にも利用されています。室内には小型ボルダリングウォールも設置されていました!

研修室に設置されたボルダリングの壁

 自然に囲まれた好立地にあり、どなたでも利用可能。使い勝手の良い充実した施設です。

秋山シーズンの表丹沢登山の注意点とは?

山岳スポーツセンター利用事業委員会の遠井良一さん

 神奈川県山岳連盟所属の遠井良一(とおいよしかず)さんに、秋の登山シーズンを目前に、表丹沢登山の注意点や、おすすめコース&スポットをお伺いしました。

気軽に行けるのが落とし穴!服装・装備から見直しを

人気のある塔ノ岳は大倉から標高差1200mのハードな山

 表丹沢の山域は人気のある山が多く、一見すると気軽に入山できる印象をもたれがちですが、実際には山域が広く、標高差の大きい登山コースが多いという特徴があるといいます。秋になると気候が穏やかで出かけやすくなりますが、日没の早さや気温の低下、落ち葉による道の不明瞭さなど、注意すべき点も増えてきます。そのため、登山前の準備段階から改めて見直すことが大切だとお話しくださいました。

<遠井さんより、秋シーズン登山の服装・装備のポイント>

  1. ヘッドランプ・防寒着は必携
    ヘッドランプを持たずに入山する人が増えています。暗くなって道が分からなくなり、山の中で泣く泣く一夜を過ごしたという事例も発生しています。秋になるとさらに暗く、気温も低くなりますので、ヘッドランプと防寒着は必ず携帯してください。さらに、小型のレスキューシートもあると安心です。
  2. 地図とナビを必ず持つ
    表丹沢では、整備された登山道が多い一方で、秋になると落ち葉が積もり、道が不明瞭になる場所が増えます。特に分岐点や尾根・沢沿いでは、踏み跡が消えてしまい、知らぬ間にルートを外れることがあります。道迷い対策として、紙地図、コンパス、GPS対応の登山アプリなどを準備するようにしてください。
  3. 登山届を提出する
    遭難したとき、捜索の初動を早めるために登山届の提出は非常に重要です。登山届は、登山口でも提出できますが、オンラインの「コンパス」や登山アプリでも提出できます。

表丹沢登山のコース選び、おすすめスポット

初心者でも比較的登りやすい三ノ塔

続いて、初心者〜上級者まで、登山コースの選び方やおすすめをお伺いしました。

  1. 初心者向け:三ノ塔コース
    初級向けは、コースタイム約4時間以内がおすすめ。ヤビツ峠を起点に三ノ塔(1,205m)や大山(1,252m)を往復するコースが該当します。
  2. 中級者以上向け:表尾根縦走コース
    ヤビツ峠から塔ノ岳(1,491m)を経て大倉登山口へ下山。コースタイムは約7時間で、絶景を楽しめます。塔ノ岳山頂の尊仏山荘や花立山荘では宿泊も可能。夜景と富士山を望む絶好のスポットです。
  3. 沢登り:勘七ノ沢
    人気の沢登りコースです。神奈川県山岳連盟の登山教室でも案内しています。

ライターメモ
神奈川県山岳連盟のホームページから、登山教室やクライミング教室の詳しい日程・スケジュールをご覧いただけます。 

神奈川県立山岳スポーツセンターを活用しよう!

 今回の取材で、秦野戸川公園の中に「これほど充実した施設があるのか!」と知る機会になりました。登山やクライミング初心者はもちろん、経験者もさらにレベルアップできるプログラムがそろっています。宿泊・研修施設も完備しており、多彩に活用できるスポットです。ぜひ次の山行やクライミング計画に取り入れてみてください。

▽神奈川県立山岳スポーツセンターの施設は公式ホームページから 
https://www.kanagawa-park.or.jp/sangaku-sc

▽登山・クライミング教室は「神奈川県山岳連盟」をご参照ください
https://www.kanagawa-gakuren.gr.jp

▽室内のボルダリングは「はだの丹沢クライミングパーク」をご参照ください
https://www.kanagawa-park.or.jp/tanzawacp

■施設名:神奈川県山岳スポーツセンター
■住 所:〒259-1306 神奈川県秦野市戸川1392
■電話番号: 0463-87-9025
■営業時間:9:00~17:00
■休業日:毎週月曜日(祝祭日の時は開館、夏休み中は開館)・祝休祭日の翌日・年末年始(12月29日~1月3日)
■施設情報
公式ホームページ:https://www.kanagawa-park.or.jp/sangaku-sc/
Instagram:https://www.instagram.com/sangaku_sc/

OMOTANライター 河村 知香 (かわむら ちか)
【得意分野】 登山、キャンプ、ハーブ、旅企画

山旅専門の会社で企画手配や添乗の仕事をしていました。秦野市に移住して約3年、丹沢の主要な山はすべて登り、庭でハーブを育てたり、夫婦でキャンプをしたりと、丹沢の奥深い自然とゆとりのある環境を満喫しています。山の経験や移住者目線を生かして、表丹沢の魅力をお届けします。
Instagram:@kawamura.chika

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