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【ライター記事】癒やしを求める方必見!自然の力で心も身体も健康になれると話題の森林セラピーの魅力をたっぷり聞いてきた!【OMOTAN人 vol.2】

はだの表丹沢森林セラピー協議会 猪股会長

何かと疲れが溜まりがちな昨今。皆さんはストレスを感じた時、何をして解消しますか?運動?声を出す?おいしいものを食べる…?疲れた時にぜひ体験してほしいアクティビティがあるんです。それは、〝森林セラピー〟。例にもれずお疲れ気味の筆者としては、セラピーという響きが癒やされそうでとても気になる…これは詳しく知りたい!
という訳で今回は、はだの表丹沢森林セラピー協議会の会長であり、自らも森林セラピーガイドとして活躍されている猪股義晴さんに、森林セラピーの魅力をたっぷり聞いてきちゃいました!

取材の場となった緑水庵。国登録有形文化財にも登録されています

お話を伺った緑水庵は、猪股さんが担当されている森林セラピーロードの蓑毛・春嶽湧水(みのげ・はるたけゆうすい)コースのスタート地点でもあります。

レモングラスはすすきのカヤと見た目がよく似ているそう

取材が始まる前、レモングラスのホットハーブティーを頂きました。爽やかで瑞々しい良い香り!肌寒くなってきた日だったのでうれしかったです。ハーブティで暖まりながら、和やかな雰囲気で取材は始まりました。

セラピー効果は1カ月も続く?!まずは森林セラピーの概要に迫る

優しい語り口の猪股さん

―まず、森林セラピーとは一体どういうものなのでしょうか。

森林浴では、森に入るとすっきりしたとか気持ちがよかったと感じると思いますが、そこから歩き方や感じ方などをもう一歩進めて、学術的に検証した結果、効果があると認められたのが森林セラピーです。

ただ歩くのではなく、音を聞きながら、物を見ながら、手で触りながら、匂いを嗅ぎながら、味わいながらといった五感(聴覚・視覚・触覚・嗅覚・味覚)を使ってゆっくり歩きます。川の音や水車が廻っている音だったり、雲が動いていたり風が吹いて木が揺れていたり、そういう一定ではない、ゆらぎであり「1/fゆらぎ」を感じることもすごく身体にとって良いことなので、五感を働かせてあちこちにある1/fゆらぎを見付けながら歩いていきます。

身体には交感神経と副交感神経とあって、交感神経というのはどちらかというと喜怒哀楽を感じた時に働き、良い働きをする側面もあれば、ストレスが溜まる原因にもなります。副交感神経が働いている時の方が気持ちが穏やかになるんです。副交感神経の働きなどを引き出すため、五感を使いながら森の中で過ごす、それが森林セラピーです。

―学術的に効果が証明されているものなのですね。

人間は、ストレスが溜まったり疲れたりすると免疫細胞(NK細胞)の機能が下がり、身体の抵抗力も下がってしまいます。森林セラピーを受けると、免疫細胞が活性化します。森の中は「フィトンチッド」という木が害虫や病気から守るため自ら発散している揮発性のガスで満ちています。それが人間に降り注ぐとすっきりしたり疲れが取れた気持ちになったりと良い効果を与えてくれます。

今、森林セラピーロードとして認定されている蓑毛・春嶽湧水(みのげ・はるたけゆうすい)のコースも、認定前の令和2年(2020年)3月に特定非営利活動法人森林セラピーソサエティが来て、科学的に実証実験をしています。実際に治験者がこの区間を歩いた結果、免疫細胞の活性化などが数値的に表れたので、同年翌4月に秦野市全体が森林セラピー基地として、またその中の5カ所が森林セラピーロードとして認められました。

ポイント
森林セラピーロードとは、心身の健康促進を目的とした自然散策のために選定・整備された道やコースのことです。森林セラピー基地とは、森林セラピーロードと連携している、森林セラピーを行うための拠点施設や地域のことを指します。

―きちんと効果が数値として表れていることで、森林セラピーの信用性を感じます。

森林セラピーは効果の持続力があることも特徴です。森林浴もそうですけど、温泉に入ったりカラオケに行ったりしても、免疫細胞は活性化します。ただ、それらは数日で元に戻ってしまう。森林セラピーは、一回受けるとほぼ1カ月間効果が持続するという実験結果も出ています。

月に一回森林セラピーを受けることで、身体の免疫力が上がって、細胞が病気に侵されづらくなります。自然の力を借りて、ストレスなどで弱った身体を元に戻す力を得ることができるんです。

―1カ月!それ程続くのはすごいですね!

林の中で寝転んで実感した、森林セラピーの力

笑顔を交えながら取材は進んでいきます

―はだの表丹沢森林セラピー協議会の概要を教えてください。

はだの表丹沢森林セラピー協議会は、令和2年(2020年)に発足しました。秦野市役所に事務局を置き、森林組合や観光協会、秦野戸川公園など複数の団体で構成されています。

森林セラピーロードを案内するガイドやセラピストも協議会に所属していて、セラピーの申し込みや、イベントを開催する時に講師・ガイドなどを担っています。私は令和4年(2022年)から会長を務めていて、秦野の森林セラピーをより良くするために関係機関等の連携やイベントの開催、人材育成など行うことで、地域振興にも資するように図っています。

―猪股会長が森林セラピーに取り組むようになったきっかけは何だったのでしょうか。

私は生まれてからずっと秦野に住んでいて秦野市役所に勤めていました。山を歩いたり、川を歩いたりして自然に触れることはずっと好きでしたね。

平成30年頃かな、たまたま山北町で森林セラピーっていうのをやっていると聞いて、面白そうだと参加してみたのが、森林セラピーとの出会いです。

その時は、林の中で〝寝転び〟などの体験をしました。寝転ぶと上が見えますよね。木が真上に向かって伸びていて、その隙間から空が見えたことがすごく新鮮な感じがしました。非日常の景色の中で風の音を聴いて、肌にも風を感じて、五感を働かせていると、全然違う世界が見えました。 それから秦野市も森林セラピーを始めると知り、自分が感じたことを今度は皆さんに広めたいと思って、ガイドの資格を取りました。

蓑毛・春嶽湧水コース内に実際にある杉・ヒノキ林。上を見上げると、非日常的な景色が広がる

自然の中で五感を働かせていると、気が付かなかったことに気付くようになる

実際の蓑毛・春嶽湧水コース内のベリー園近くに咲いていた植物。何の植物だろうと思いを馳せながら歩くのも楽しい

―森林セラピーに取り組まれていて、やりがいや面白さを感じるのはどんな瞬間ですか。

時期によって、同じ場所を歩いていても違うんですよ。花が違う、草が違う、木の葉っぱの色や付き具合が違うとか。川も増水した時と水が少ない時とで全然違う。天気だって晴れている時と小雨が降っている時と、季節も春から冬まで。下見をして、本番の森林セラピーをやって、とすると何回も歩きますから、今まで見えなかったものが見えたり新しく発見したり、そういうのはいいですよね。

こちらでは気が付かなかったものを、参加者に「これは何ですか」と聞かれて気付くこともあります。分からなくて、次回までに調べてきますとか。調べるのも楽しいですね。

あと、去年は生えていたけれど今年はなくなっちゃったということもある。自然相手だから色々なことがありますよね。

雨の時の楽しみ方は、晴れや曇りのときとまた違うから。それをまた教えてあげるのも一つの方法だと思います。雨でもね、楽しめるんですよ。水滴や湿った状態をうまく使うと、今まで見たことのないような景色が見れます。だから雨用のプログラムを作って、それに沿って案内しています。傘をさしてるから普段とは少し違う視点で案内すると、参加者も自分も気が付かなかったものに気が付くんです。

―「気が付かなかったものに気が付く」という言葉は、キーワードですね。森林セラピーの参加を通して、身体も心も緩んで視野が広くなりそうです。

五感を使って歩くということは日常にまずないんですよね。五感を使いながらゆっくり歩くことによって、見えなかったものが見えてくる。プログラムの最後の方になると、皆さん顔つきも変わってきて何も言わなくてもだんだん分かってくるようになります。

できればガイドの人と一緒に行うのがおすすめ

蓑毛・春嶽湧水のコースの地図。赤い点線が森林ロード

―参加者の方はどんな方が多いですか。

女性が多いです。はだの表丹沢森林セラピー協議会では、森林セラピー中に森林ヨガやアロマ作り、ハンモック体験などアクティビティをオプションで設けています。筒状の道具で川の水音に耳を傾ける「川のせせらぎ聞き」は、川音が全然違う音が聴こえるって好評ですね。あと、森林セラピー弁当もあります。山を歩く中で味覚を感じることは中々ないから、秦野の食材をふんだんに取り入れたお弁当は人気ですね。またアロマは蒸留器があって、高級和菓子についてくる爪楊枝にも使われる、クロモジをよく蒸留します。

―女性に人気なのもうなずけます。他はどのようなプログラムがありますか。

親子セラピーもやったことがあります。最初から一緒にやるのではなくて、親は親、子は子で別々に散策しながら最後に親子一緒になるプログラムでした。そうすると親は子どもが心配でしょうがないんですよ。でも親は親、子どもは子どもで色々遊んで、参加者同士の交流を深めてもらいます。子どもは、最初は警戒して動きもぎこちないんだけれど、やっぱりどんどん自然に馴じんでいきます。だからそれだけでも効果は表われている。親も子どもも、お互いに見せたいものがあったら、対面した時にこれは何々だよって説明しています。そうすることで会話も増えるし、自分の子どもがどんなことを思ってるかが自然の中で分かる。非日常の経験を経て親子の会話が増えるのも、森林セラピーの効果なのでしょうね。

―森の力はすごいですね。ガイドやセラピスト無しで森に入っても同様の効果は得られるのでしょうか。

個人で森や林の中に入った時に、森林セラピーを受けたのと全く同じ効能が得られるかと言ったら、難しいかもしれません。川の音を聴くなどしてゆっくり歩いたり、同じようにやれば効果は表れるけれど、一人でいるとやっぱりゆっくりできないんですよ。次へ次へと進んでいってしまいます。ガイドがいれば、五感を働かせながらゆらぎを感じながらのゆっくりしたペースを作って、心と身体が森の力を感じ森に溶け込むような体験を提供できると思います。

―きちんとペースを作って導いてくれる存在、まさにガイドですね。

福利厚生であってもいいかも?!はだの表丹沢森林セラピー協議会の今後の取り組み

資料を手に丁寧に説明をする猪股会長

―はだの表丹沢森林セラピー協議会としての活動の中で感じる難しさや、苦労、今後の目標はありますか。

森林セラピーはまだまだ認知度が低いんですよ。多分皆さんもご存じなかったでしょう。まずはそれを広めていきたいです。森林セラピー基地となっている市町村間で交流を図り、森林セラピーを盛り上げていきたいですね。

また、我々がプログラムを作って一般の方に募集をかけるのも一つの方法ですが、例えば企業の福利厚生に組み込んでもらうのも良いと考えています。昨年の令和5年(2023年)は、団体として秦野市地域生活支援センター“ぱれっと・はだの”や、婚活セラピーといった市の事業、健康保険組合などの参加がありました。

秦野市役所では新人研修でも行ったことがありますが、「秦野の自然の豊かさを感じることができ、また日常業務で感じるストレスを発散することができた。研修でなく次回はプライベートで参加したいと思った」「通常業務とはちがう空間でリラックスすることができた」と、好評でした。ぜひいろいろな企業の福利厚生や研修として森林セラピーを受けてもらって、その効果を実感してほしいです。手始めに、秦野市内の企業の福利厚生事業として取り入れてもらえたら。そうすると知名度も上がってくるし、疲労の回復と森林セラピーは相性が良いから、仕事で疲れた人に森林セラピーを受けてもらって、元気になって仕事の効率も上がれば、双方良いですよね。

―福利厚生!実際に企業へ積極的に働きかけをされていますか?

これから取り組みを進めようと準備しています。今、神奈川県の組合や障害者施設、企業などから問い合わせが来ていて、需要はあると実感しています。積極的にこちらからもPRしていきたいです。すでに福利厚生として森林セラピーを取り入れている大手の企業があり、秦野にも来ているので、さらに進めていきたいですね。

森林と里山。両方あるのが秦野市蓑毛の魅力

棚田のある風景は蓑毛・春嶽湧水の中の見どころの一つ

―秦野の森林セラピーだからこその魅力はありますか。

一番は、自然の森や林、山や川があるということです。東京だと、公園などで森林セラピーをやっています。公園は平坦だから歩きやすいし、池や小川などとともに色んな木を植えているから楽しめますし、身近にあるので体験しやすいです。

一方、表丹沢のふもとの蓑毛は、自然の森でより多くのフィトンチッドを享受できます。蓑毛は森と里山とがあって両方楽しめる、そこが魅力ですよね。川沿いが多いので川音を聴くことで1/fゆらぎによる癒やしの効果も得られやすいし、大山詣でなどで歴史好きの人にもおすすめの場所がたくさんあります。

森林セラピーの後の温泉や、地場産物の食事などで、より森林セラピーの効果が高まるという研究結果も出ているので、帰りに名水はだの富士見の湯に入って帰るのもよいかもしれません。JAのはだのじばさんずでは新鮮な地場野菜が販売されているので、コースに組み込めば経済効果として地域に還元されます。森林セラピーが広がって、表丹沢にある蓑毛の魅力を色んな人に感じてもらって、そうして今、蓑毛で生活している人たちにも、「蓑毛って良いところなんだな」って思ってもらえたらいいですね。

筆者あとがき

夕暮れに佇む姿が美しい緑水庵。晩秋からは夜にライトアップのイベントがあることも

この日は、夕方から静かな雨が降っていました。猪股さんのゆったりとした優しい語りに、時折ぽつぽつと遠くの雨音が混ざって聴こえます。蓑毛・春嶽湧水のコース内のおすすめ箇所を伺っている最中、ふわっと香るレモングラス…。暗いオレンジ色だった空は、帰る頃には懐中電灯がないと歩けないほど真っ暗になっていました。

緑水庵の非日常な空間もあいまって、図らずも五感が働いている状態を体験したような今回の取材。確かに、実際の森や林の中でこういう時間が持てたら、心も身体もリセットされるんだろうなぁ。それにしても、森林セラピーの効果ってすごいですね。一カ月も続くなんて!日常の疲れを癒やしたい!と思った方、下記から森林セラピーの申し込みをすることができます。秦野市のホームページにてはだの表丹沢森林セラピーを詳しく知ることができるので、ぜひ見てみてくださいね。

■申し込み先:秦野市森林ふれあい課
■電話番号:0463-82-9631
■メールアドレス:shinrin-f@city.hadano.kanagawa.jp
■受付:原則3週間前までにご相談ください。日程が近い場合でも対応できる場合があります。
■参加人数:1名から可能です。料金(目安)セラピーガイド1名につき参加者7人くらいまで対応いたします。
■料金:有料となります。詳しくは秦野市のホームぺージをご確認ください。
■秦野市ホームページ:
https://www.city.hadano.kanagawa.jp/www/contents/1593502599385/index.html

OMOTANライター 那保 (なお)
【得意分野】 インタビュー、グルメ

フリーライターの那保です。国内旅行業務取扱管理者、添乗員資格有り。神社好き、シンガプーラ飼いの猫好き、美味しいものも大好き。
神奈川へは移住組、その多彩な魅力にまんまとハマってます。
表丹沢を駆け回れるようになるべく、目下体力づくりに奮闘中。インスタでは表丹沢ほか、魅力的な写真を投稿しているので、ぜひ覗いてみてください!
Instagram:@nyao_muu

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