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【ライター記事】春だ!桜だ!表丹沢の麓で叶う、春の絶景を見に行こう!地域に愛され訪れる人を魅了する、「春めき桜」と「淡墨桜」

春めき桜、淡墨桜

暖かくなってきた春を、祝福するかのように咲き誇る桜。表丹沢の麓である神奈川県秦野市の東地区には、地域に愛され、春になる度に観光客を魅了する素晴らしい桜の風景が数多くあります。今回はそんな桜たちの中から、寺山の「春めき桜」と蓑毛の「淡墨桜(うすずみざくら)」をピックアップ。絶景をご紹介します!

まるで桃源郷!表丹沢東地区の寺山の春をピンクに染める「春めき桜」

川沿いにどこまでも広がる「春めき桜」(2025年3月18日撮影)

「この世の春!」思わずそう呟いてしまうほど、鮮やかなピンク色が出迎えてくれました。秦野市寺山にある、「全国屈指の蕎麦の名店」として名高い手打ちそば石庄庵。隠れ家のような雰囲気が人気の名店で、店舗敷地内や近くの中丸沢沿いで「春めき桜」が楽しめます。

2000年に品種登録された春めき桜は、南足柄市の古屋富雄さんによって開発された、神奈川県生まれの桜。開花が早く、ソメイヨシノより一足先に春の訪れを告げてくれます。

寺山は、産地である南足柄市に次いで春めき桜が見られる場所だそう。石庄庵の店主であり、「中丸の里山を守る会」代表でもある石井貞男さん(71歳)に植樹のきっかけをうかがいました。

手打ちそば「石庄庵」店主であり、「中丸の里山を守る会」代表の石井貞男さん

「元々、石庄庵を開業する前からここにそば畑を展開していました。その頃から登山客も訪れてはいましたが、そばの花は夏から秋にしか見られない。将来ここにお店を構えるつもりでしたので、そばの花に代わり観光客を楽しませるものをと、日本人の心として『花なら桜』だと思って植え始めたのがきっかけです。その頃、春めき桜の生みの親である古屋さんと知り合う偶然も重なり、毎年3~5本ずつ春めき桜の植樹を行ってきました」

2000年から始まった春めき桜の植樹。2008年には石庄庵が開業し、2025年の現在は、河川敷から店舗敷地内に至るまで、110本の春めき桜が連なる景色を楽しむことができます。

「春めき桜」と寺山の里地里山を守る、「中丸の里山を守る会」

石井さんと共に、春めき桜の植樹を行っている「中丸の里山を守る会」。石庄庵と石井さんを慕う人たちが集う石庄会が前身で、その仲間の皆さんで環境整備を行っていました。「中丸の里山を守る会」は、石庄会から引き継がれたような形です。

「秦野市寺山が、2013年に15番目の神奈川県里地里山保全地域に指定されたことを受け、石庄庵だけでは桜や棚田、自然の原風景を守れないと考え発足した会です。

寺山も高齢化が進んできたことから、会の皆で一念発起し、毎月第3日曜日に集まって桜を育てながら草の刈り込みや清掃作業などを行っています。いま会員数は15名で、秦野市以外にも東京や横浜からの参加や、中には中国や韓国の子もいるんです」

中丸沢沿いを反対側から見た風景

「この原風景をできるだけきれいな形で残していきたい。石庄庵も恩恵を受けているから、お返しではないけれど地域の環境も守っていこうと動いていたら、一緒に動いてくれる人が集まってきた。3月下旬には桜祭りが行われますが、そういった活動も皆さん自主的に取り組んでくれています。若いメンバーも多いので、活動の後には人生相談に乗ったり。まずは楽しみながら活動できるよう、石庄庵に露天風呂まで作ってしまいました」 2000年頃までは中丸沢の河川敷にゴミが捨てられていたりもしたそうですが、「中丸の里山を守る会」の皆さんが桜を植えてからはそんなことも一切なくなったそうです。2024年頃には河川敷周辺は植え終わったため、現在は石庄庵の敷地内への植樹が始まりました。今後もこの素晴らしい桜景色が広がっていくのかと思うと、ますます楽しみですね!

まるでひな祭りを思わせる愛らしさ。「春めき桜」の見どころ

近くで見ると愛らしい

一重で小さめの桜が連なって咲く姿が何とも可愛らしい春めき桜。取材日の3月中旬は7分咲きくらいの様子でしたが、満開になるともっとまん丸でぼんぼりのような姿になるそうですよ。低木のためお子さんでも花が見やすいので、ぜひ近くで見てみてくださいね。

「横浜や東京からのお客さんも多く、ここに来ると『ストレスフリー』になるそうです。それを大きく感じたのはコロナの時。車から降りると皆さん大きく深呼吸する。それをみた時に、ストレスフリーな環境なんだなと実感しました。桜がない時期でも近くを一周するだけでもリフレッシュできるので、訪れる皆さんにはぜひそのストレスフリーの感覚を味わってほしいですね」と石井さんは話します。

取材した3月中旬。こちらで7分咲き

春めき桜自体は早咲きではありますが、石庄庵が標高230mに位置するため、例年の見ごろは3月中旬から下旬になります。

春めき桜の見頃が過ぎてからはソメイヨシノが咲き始めるので、4月いっぱいくらいまでは桜が楽しめるそう。石庄庵のテラス席から見るソメイヨシノもまたお薦めとのことでした。

菜の花の中、凛と咲く姿が美しい!「蓑毛の淡墨桜(うすずみざくら)」

絵に描いたような春の風景

そして、蓑毛(みのげ)にも、春になるとたくさんの人が見に訪れる桜があります。その名も淡墨桜(うすずみざくら)。名前から可憐な様子がうかがえますね…!

どんな桜なのか、さっそく淡墨桜(うすずみざくら)を所有されている猪股義晴さん(76歳)にうかがいました!

何と岐阜県根尾谷の淡墨桜の子孫?! 植樹したきっかけは?

淡墨桜(うすずみざくら)と聞いて、岐阜県根尾谷(ねおだに)の桜を思い浮かべる人もいらっしゃるのではないでしょうか。樹齢1500年を超えるとも言われる根尾谷の淡墨桜は、山梨県の山高神代桜、福島県の三春滝桜と共に日本三大桜の一つに数えられています。実は、蓑毛の淡墨桜はそんな根尾谷の淡墨桜の子孫なんです!

どうして遠く離れた岐阜の淡墨桜の子孫がここ、表丹沢の麓の蓑毛に?まずはその謎から猪股さんにうかがいました。

淡墨桜の所有者である猪股さん。はだの表丹沢森林セラピー協議会の会長でもあります

「蓑毛の淡墨桜を庭に植えたのは、1989年。いま、樹齢約36歳です。実際は1mくらいの苗木をもらっているので、もしかしたら37歳とかかもしれませんね。

元々は岐阜に私の弟が赴任しており、家族で遊びに行った際に根尾谷の桜を観に行ったのですが、その時は花の見頃が過ぎてしまっていた。残念だと思っていたところ、2年後くらいに弟から、あの根尾谷の子孫だと苗木を譲り受けたのがきっかけです」

最初は植えるのをためらったそうですが、せっかく弟さんから譲り受けたので、自身の田んぼの一番北側に植えたのだそうです。裏手が川のため田が日陰にならない場所で条件が良かったのか、苗木はすくすく育ち、今では20mを超える大木になりました。

しかし、意外にも最初はまったく花を咲かせなかったそうです。 「2013年頃までの24年ほどは木が大きくなるばかりでほとんど花が咲かず。どうしようかと桜の木の下で、家族で話していたら翌年、いきなり花を全体につけ、その綺麗さにとてもびっくりしました。あまりにも素晴らしいので、これはたくさんの人にぜひ見てほしいと、その年からまずは個人で公開を始めました」

堂々とした枝ぶり

「今思うと、それまでは花を咲かせるための養分を蓄えて、木を大きくすることに専念していたのかもしれません。木の下でどうしようか、と話しているのを聞いて、伐られちゃ困ると慌てて咲いてくれたのかな」と、笑って話してくださいました。

今では毎年見事な咲きっぷりを見せてくれている淡墨桜。 もっと皆さんに楽しんでほしいとの思いから、2015年からは夜間のライトアップも始まりました。

ライトアップの仕掛け人!「蓑毛地区活性化対策委員会」とは

ライトアップ時はほんのりピンク色になるそう

夜でも淡墨桜を見られるようにと、日没から19時30分まで行われているライトアップ。桜の開花状況にあわせ、3分~4分咲きの頃から始まります。

発電機やライトなどの機材から始まりその準備のすべてが、「蓑毛地区活性化対策委員会」の皆さんの協力のもと成り立っています。機材は緑水庵の紅葉のライトアップで使用されているもの。この緑水庵の紅葉のライトアップもまた、同委員会による町おこしの一環です。

ライトアップされた緑水庵。灯りに照らされる紅葉も美しい

蓑毛も少子高齢化が進み、子どもたちの数も大分少なくなってしまったそうで、何とかしないととの思いから、蓑毛の魅力を発信していくため発足された「蓑毛地区活性化対策委員会」。これまでにも、緑水庵の紅葉のライトアップを始め、「お月見の会」や「森林セラピー」の開催、「桜ともみじのわくわく広場」への植樹などさまざまな事業を行ってきました。

「蓑毛の町おこしのため、ないものねだりではなく『あるもの探し』をしようという気持ちで取り組んでいます」と、猪股さん。

「蓑毛の魅力をまずは外に向けて発信して、外から蓑毛は良いところだなって思ってもらえるように。普段暮らしていると、なかなか自分たちではその良さに気づけない。良い例が、『てくてくウオーク』というハイキングコースを作ったのですが、その時に市外の参加者から『小川のせせらぎが気持ち良い、空気が澄んでいる』と言われたのです。毎日過ごしているなかでは当たり前すぎて気付かなかった。こうして外の方から蓑毛の魅力を教えてもらうこともあるのです。無いものをねだるのではなく『あるものを探す』という気持ちで、時間はかかるかもしれませんが、蓑毛の良さが外から内側にも伝わるように発信を続けていきたいですね」 近年はこの淡墨桜も、蓑毛の魅力の一つとして同委員会から市内外の皆様へ向けて、蓑毛の良さを伝える役割を果たしています。

品のある姿に折れない心、日本人好み?!の淡墨桜の見どころは?

繊細な美しさ

つぼみのうちは柔らかなピンク、満開になるにつれ白くなり、散り際にはうっすらと墨色に変わる淡墨桜。一説には、その散り際の花びらが墨色に染まる儚い姿から、「淡墨桜」と呼ばれるようになったとも言われています。

花びらも小さめで繊細さが印象的な淡墨桜ですが、実は力強い部分も。

「ソメイヨシノは8分咲きくらいから徐々に散り始めてしまいますが、淡墨桜は満開になってからも一週間くらいは散らずに花を保ち続けます。その間、雨が降っても強風が吹いても散らずに咲き続ける、強い桜なんです」

エドヒガンザクラという桜の一種である淡墨桜。三大桜のうち、樹齢2000年とも言われる神代桜も同じ種類です。掛け合わせでなく原種なので、丈夫で長生きしやすいのかもしれないとのこと。

白く品のある花ぶりと、雨にも風にも負けない折れない姿。まさに日本人好みの桜かもしれませんね!

全国には他にも根尾谷の淡墨桜から株分けされた淡墨桜自体はありますが、ここまで大きく一本桜として咲いているものは珍しいそうです。

「根尾谷に見に行ったけれども、見頃が過ぎていたり、渋滞や人の混雑がすごくて諦めてしまった人が、蓑毛の淡墨桜にたどり着いて観に来てくれたりもしています」と猪股さん。

樹齢1500年に比べ、まだ36歳と若い蓑毛の淡墨桜。この先1000年と残り、根尾谷の桜と同じくずっと愛されていくかもしれないと思うと、とってもロマンを感じます。

通路もあり見やすくなっています

また、蓑毛の淡墨桜では、桜と一緒に咲く菜の花も見どころの一つ。訪れた人がもっと楽しめるようにと、猪股さんが種から育てられました。菜の花の明るい黄色と、桜の柔らかなピンクのコントラストがとっても映えます!

既にSNSでも話題の淡墨桜。菜の花畑には通路もあるので、写真も撮りやすくなっています。また、今後お写真を撮るのがもっと楽しくなるような仕掛けや装置も考えているとのこと。

まだ大きなトラブルは起きていないそうですが、近隣は住宅街であるため、むやみに騒いだり立ち入ってはいけない場所を通ったり、道路に駐車したりしないよう、公開を持続させるために見に来られる方は節度をもった行動を心がけてくださいね。 淡墨桜の開花も本当に年によってまちまちで読めないそうですが、例年は3月半ばくらいに開花が始まります。遅い年では4月の頭になることあるそうで、3月中旬に行われた取材では、残念ながらまだつぼみのままでした。猪股さんのFacebookに今後も細かく情報がアップされるそうなので、ぜひチェックしてみてください!

筆者あとがき

古来からあるエドヒガンザクラの一種であり、一本で凛と可憐に立つ蓑毛の淡墨桜。神奈川県で新しく開発され、愛らしくぼんぼりのように連なって咲く春めき桜。

それぞれに美しさを発揮している桜たちですが、関わっている皆様の、「この素晴らしい春の風景を、訪れる全ての人に楽しんでほしい。そして美しい表丹沢の自然を守っていきたい」という温かい気持ちは一緒なんだなぁと、しみじみ感じました。 表丹沢の桜が気になる!と思った方、ぜひ訪れてみてくださいね。きっと、一度見たら忘れられないくらいの、絶景の春が待っています。

■春めき桜(見頃 3月中旬~下旬)
施設名:手打ちそば 石庄庵
住 所:秦野市寺山1580
電話番号:0463-82-1222
営業時間:火・水・木・金・土・日・祝日11:30 – 15:30 17:00 – 20:00
定休日:月曜日(祝日の場合翌日)
施設情報
Facebook:https://www.facebook.com/people/%E6%89%8B%E6%89%93%E3%81%A1%E3%81%9D%E3%81%B0-%E7%9F%B3%E5%BA%84%E5%BA%B5/100063487005919/

■淡墨桜(見頃 3月末頃~)
住 所:秦野市蓑毛453
問い合わせ先:蓑毛地区活性化対策委員会(事務局/猪股さん)
電話番号:0463-81-8679 
施設情報
Instagram:https://www.instagram.com/yosiharuinomata/
Facebook:https://www.facebook.com/yosiharu.inomata/?locale=ja_JP

OMOTANライター 那保 (なお)
【得意分野】 インタビュー、グルメ

フリーライターの那保です。国内旅行業務取扱管理者、添乗員資格有り。神社好き、シンガプーラ飼いの猫好き、美味しいものも大好き。
神奈川へは移住組、その多彩な魅力にまんまとハマってます。
表丹沢を駆け回れるようになるべく、目下体力づくりに奮闘中。インスタでは表丹沢ほか、魅力的な写真を投稿しているので、ぜひ覗いてみてください!
Instagram:@nyao_muu

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