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【ライター記事】山と人のぬくもりに包まれて 表丹沢の春の訪れを告げる【第69回秦野丹沢まつり】

第69回秦野丹沢まつり

春の柔らかな日差しが、薄曇りの空の下の表丹沢の山々を照らし出し、県立秦野戸川公園は多くの人々でにぎわっていました。山の麓に広がる公園は、「まつりの広場」になり、訪れる人々を笑顔で迎え入れているようです。ジビエ料理の匂い、力強い太鼓の響き、そして子どもたちの笑い声が響き渡り、4月20日に開催された第69回秦野丹沢まつりは、地域と自然が温かく結びつく、かけがえのないひとときを創り出していました。

第69回開山式で山の神々と、人の想いが交わる瞬間を体感

厳かに執り行われた登山安全祈願式

県立秦野戸川公園のシンボル、風の吊り橋を一望できる芝生広場が、この日、厳かな儀式の舞台となりました。朝の柔らかな光に包まれる中、登山安全祈願式が始まりました。神職の祝詞が響く中、秦野丹沢まつり実行委員会会長である高橋昌和秦野市長が登山者の安全を願い、神前から「開山の鍵」を授かる姿には、山への深い畏敬の念と、人々の祈りの心が込められているようでした。

丹沢アルプホルンクラブによるホルン演奏

続いて、秦野観光和太鼓の力強い演奏が、広場全体に響き渡ります。打ち鳴らされる太鼓の音は、まるで山の鼓動そのもの。大地と共鳴するようなリズムに、観客は自然と身体を揺らし、表丹沢の山々に新たなエネルギーが満ちていくのを感じました。そして、いよいよ第69回山開き式。高橋市長のあいさつに続き、丹沢アルプホルンクラブによるホルンの音色が、山間にやさしく響き渡ります。静寂の中に溶け込むその旋律は、自然に対する感謝と畏敬の念を静かに物語っているようでした。

厳かな雰囲気の中、「開山の鍵」が集中登山隊を率いる小宮邦俊隊長と、登山系YouTuberのやぎちゃんに託されました。

会場に設けられた「山門」では、山北の古刹・東光院の山伏たちによる「峰入りの儀」が執り行われました。ほら貝の音とともに、装束に身を包んだ山伏が登壇すると、場の空気は一瞬にして神聖なものへと変わりました。

開山の鍵を手に集中登山に出発する小宮隊長とやぎちゃん

小宮隊長とやぎちゃんの手によって「山門」が開かれると、集中登山の隊列は一斉に山へと歩を進めました。それはまるで、眠っていた山がゆっくりと目覚め、再び人々を温かく迎え入れる、そんな聖域な瞬間のように感じられました。その様子を見守る人々の表情からは、表丹沢の山々が、この地に暮らす人々にとって、かけがえのない特別な存在であることが強く伝わってきました。

集中登山に参加した人々には、表丹沢のシンボルが刻まれたオリジナルピンバッジが配られました。それは、山と人との間に結ばれた大切な絆を証す小さなお守りのよう。胸元で静かに輝くそのバッジは、訪れた人々の記憶とともに、表丹沢の山の物語をこれから先も語り続けていくことでしょう。

まちと山が一つになる山開きパレード&米倉丹後守子供大名行列

華やかな山開きパレード

「山開き」と聞くと、多くの人が山頂での儀式や登山道の整備など、山の中で行われる行事を思い浮かべるかもしれません。けれども、表丹沢の「山開き」は少し違います。山の中だけで完結するのではなく、麓のまちの人々とともに祝われる――そんな表丹沢ならではの温かさと、地域全体の一体感があるのです。

今年、秦野市は市制施行70周年という節目を迎えました。その記念すべき年にあわせて、例年よりも一層華やかに山開きパレードが渋沢駅周辺を舞台に華やかに開催されました。会場の周囲には地元の人々をはじめ、多くの来場者が集まり、にぎわいを見せていました。

パレードのメインを飾ったのは、はだのふるさと大使を務めるLUNA SEAの真矢さんと、秦野祭囃子(ばやし)社中による迫力ある演奏です。和太鼓の重厚な響き、笛の軽やかな音色が青空の下に広がり、会場の空気を一変させました。まちに響く笛の音色、太鼓の一打ひと打ちがまるで山の鼓動のように心に響き、見ている人々も思わず体を揺らして拍手を送ります。

米倉丹後守子供大名行列

また、今年のパレードで特に注目を集めたのが、10年ぶりに復活した「米倉丹後守(よねくらたんごのかみ)子供大名行列」です。色鮮やかな装束に身を包んだ子どもたちが、太鼓や笛の音に合わせて堂々と行進する姿は、見ているだけで誇らしく、そしてほほ笑ましいものでした。小さな手にしっかりと握られた槍や扇子が太陽の光を反射し、まるで歴史絵巻の一場面を見ているかのよう。子どもたちの一生懸命な姿に、沿道の大人たちも自然と笑顔になっていました。

パレードの終わりには、西中学校の校庭いっぱいに拍手と笑顔があふれていました。それはまるで、麓に暮らす人々が山の神様に向かって「今年もよろしくお願いします」と伝える、心からのあいさつのように感じられました。

デジタルと自然の融合を楽しむOMOTANスタンプラリー

「OMOTANコイン」アプリを活用したデジタルスタンプラリー

表丹沢の自然と地域の魅力を、スマートフォンを通して体感できる新たな試みも実施されました。それが電子地域通貨「OMOTANコイン」アプリを活用したデジタルスタンプラリーです。

この取り組みは、2024年12月に始まった「OMOTANコイン」を活用したスタンプラリー企画です。渋沢駅周辺にある5つの商店会を舞台に、参加者は3カ所以上を巡ってデジタルスタンプを集めることで応募が完了するという仕組みになっています。

スマートフォン片手に商店街を歩く参加者の姿は、昔ながらの街並みに新しい風を吹き込んでいました。地図アプリと連動したスタンプラリーは誰でも簡単に参加でき、まるで宝探しをしているような感覚で地域を巡る楽しさがあります。

アプリで手軽に参加できるスタンプラリー

スタンプを3つ集めると、豪華賞品への応募権を獲得。特賞には最新の電子炊飯器、実行委員会長賞として「OMOTANコイン」個店ポイント3,000円分が用意されていました。参加賞として配布された山開きステッカーも、記念として嬉しい一品です。

参加賞の山開きステッカー

観光と自然、そしてテクノロジーが手を取り合うことで、表丹沢の楽しみ方がまたひとつ広がった印象です。普段は通り過ぎてしまいがちな小さなお店や路地裏にも足を踏み入れるきっかけとなり、商店主とのふれあいが生まれる場面も多く見られました。

デジタルの力で街と人をつなぐこのスタンプラリーは、今後、四季折々のイベントと連動して定着していけば、地域に新たな活気をもたらす可能性を大いに秘めています。

家族で楽しむ!アウトドア体験と山の魅力発見

体験クライミングを楽しむ参加者

秦野丹沢まつりの会場となった県立秦野戸川公園会場では、美しい自然とふれあいながら身体を思いきり動かせるアクティビティが多数開催され、家族連れでにぎわっていました。

特に注目を集めていたのが、はだの丹沢クライミングパークで行われた「山開きボルダリング」体験です。色とりどりのホールドが並ぶ壁を、子どもたちが夢中になってよじ登る姿が印象的でした。スタッフの丁寧なサポートと安全に配慮された設計により、初心者でも気軽にチャレンジできる内容となっていました。

また、県立山岳スポーツセンターでは、本格的な装備を使った「体験クライミング」も実施され、ハーネスを装着し、インストラクターの掛け声にあわせて参加者が果敢に挑戦。普段なかなか触れることのない山岳スポーツの世界を誰でも体験できるこの企画は、アウトドアに興味を持つきっかけづくりとしても好評でした。

アウトドアアクティビティを楽しむ人々

さらに、県立秦野戸川公園パークセンター周辺には、アウトドアブランドのブースや体験型アクティビティが立ち並び、歩くだけでも楽しい空間が広がっていました。テントやキャンプギアの展示コーナーでは最新アイテムに触れながらスタッフに質問する人の姿も。子ども向けのミニワークショップや自然素材を使ったクラフト体験もあり、家族で楽しめる工夫が随所に感じられました。

「山って、登るだけじゃないんだね」「外遊びって、こんなに楽しいんだ」――そんな声があちこちから聞こえてくるほど、県立秦野戸川公園は終日、笑顔に包まれていました。体験を通して自然の楽しさに目覚める子どもたち、アウトドアの魅力を再発見する大人たち。それぞれが表丹沢の自然と心を通わせるひとときを過ごしていたように思います。

登山者だけでなく、初心者やファミリーも気軽に楽しめるこのアウトドアイベントは、山と人とをつなぐ新しい入り口のひとつ。表丹沢の持つポテンシャルを、五感で感じられる貴重な体験の場となっていました。

山と人と、心がつながる場所「秦野丹沢まつり」

集中登山に参加する皆さん

今回訪れた丹沢の山開きを祝う「秦野丹沢まつり」は、単なる登山イベントではありませんでした。そこにあったのは、来場者数5万6千人を超える山を愛する人たちと、この地に暮らす人々がそれぞれの想いを持ち寄り、それが見事につながり作り上げた、ひとつの大きな「空間」だったように思います。

「表丹沢って、こんなにも開かれた、温かい場所だったんだ」

自然との距離がぐっと縮まったこの一日が、きっと日々の暮らしにも優しく寄り添ってくれる、そんな感覚を覚えました。

来年は、いよいよ記念すべき第70回を迎える秦野丹沢まつり。春の風が心地よく吹き抜ける丹沢の麓で、地元の方と交わすあいさつ、見知らぬ登山者とのふとした会話、そして山の空気に触れるひとときが、きっと心に残る一日になるはずです。ぜひ一度、表丹沢の懐に抱かれた秦野丹沢まつりへ足を運んでみてはいかがですか。

秦野丹沢まつり
■会場
県立秦野戸川公園
〒259-1304 秦野市堀山下1513
秦野市立西中学校
〒259-1315 神奈川県秦野市柳町2丁目5-1
■問合せ先
秦野丹沢まつり実⾏委員会(秦野市役所観光振興課内)
〒257-8501 秦野市桜町一丁目3番2号
TEL 0463-82-9648
公式ホームページ
https://www.kankou-hadano.org/tanzawa69/
Instagram
@hadano_kankou
https://www.instagram.com/hadano_kankou?igsh=bG05aGtlNGJoY3I0

OMOTANライター 及川 じゅりこ (おいかわ じゅりこ)
【得意分野】 子どもと楽しむ

3年前に子育て環境を重視して都心から秦野市に移住してきた週1都内勤務のほぼリモートワーママです。
やんちゃな息子2人と新しい事に挑戦したり、楽しいスポットにお出かけすることが大好き!OMOTAN子連れスポットのリアルな体験をお届けします。

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