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【ライター記事】「Bellmare Racing Team」監督 宮澤 崇史さん【OMOTAN人 vol.5】

世界を舞台に活躍してきた 宮澤監督が語る秦野・ヤビツ峠の魅力

「ヤビツ峠」といえば、一度は登ってみたい憧れの場所として登山者やサイクリストに全国的に知られています。このヤビツ峠を拠点のひとつに数えるロードレースチームの Bellmare Racing Team(ベルマーレ・レーシングチーム)で監督を務める宮澤 崇史さんにインタビュー!世界中で活躍してきた宮澤さんに表丹沢のおすすめスポットや、ヤビツ峠での活動、今後の野望などを教えていただきました。

「Bellmare Racing Team」と秦野・表丹沢の繋がり

Bellmare Racing Teamの皆さん

「Bellmare Racing Team」は、神奈川県の湘南地区を拠点として活動している自転車ロードレースのチームで、2010年に発足しました。2015年に国内から世界へと選手を輩出するべく、本場ヨーロッパなどで18年間にわたってロードレース選手として活躍してきた宮澤崇史さんを監督に迎えました。

宮澤さんはアジアチャンピオン、北京オリンピック代表を経て、32歳で日本チャンピオンのタイトルを獲得した元トップアスリートです。

「湘南をベースに活動していますが、表丹沢にあるヤビツ峠では、登坂力の向上や、自分自身の体調を把握・管理するために、チームのトレーニングとして上りのタイム計測を定期的に行っています。『ヤビツ峠を何分で登れるか!?』がサイクリストの間で一つの指標になっているんですよ」と教えてくれました。

トップ選手の育成だけでなく、ヤビツヒルクライム教室や平塚競輪場でのトラック練習会の開催など、サイクリングの普及活動を行っています。宮澤さんが構想している、秦野の子どもたちへの自転車運転の安全運転を学ぶ教室では、「自転車の乗り方だけではなく、『なぜそうなのか』というルールの背景を自分自身で考えてもらえるような取り組みをしたいです」と語り、自転車競技が表丹沢に根付くことを願っています。

相模湾から江ノ島まで一望「菜の花展望台」の大パノラマ

雄大な眺望!宮澤さんの愛犬しじみちゃんと一緒に

今回の取材は、普段から宮澤さんが走っているコースを、ドライブしながらサイクリスト目線で表丹沢の魅力スポットを解説していただきました。秦野駅から穏やかな住宅街をしばらく走ると、名古木(ながぬき)交差点近くに到着します。この交差点がレースの出発地点。はじめはなだらかな坂道でしたが徐々に勾配はきつくなり、住宅街がまだらになるといよいよ本格的なヒルクライムルートへ突入します。

針葉樹林の山道を抜け、到着したのは「菜の花台の展望台」でした。台地から大迫力のパノラマビューを体感でき、晴れた日には秦野市内だけでなく、相模湾から江ノ島まで一望できます。夜景も美しく、秦野のデートスポットの定番だとか。目の前に開ける眺望に思わず深呼吸。

少し霧がかかっていたこの日も抜群の眺望でした

菜の花台にはこの眺望をさらに楽しめる螺旋階段状の展望台があり、展望台の近くにはロードバイクを停めておくことができるサイクルラックが設置されていました。

「秦野市街からヤビツ峠まで一本道のため迷いようがなく、初心者のサイクリストや登山者にとっても、分かりやすい道のりでいいですね」と話す宮澤さんの言葉通り、旧デイリーストアー前の信号からこの菜の花台まで信号がありませんでした。これぞ、サイクリスト目線の魅力です。

撮影のためゆっくり走行してくれましたが、近くで見ると迫力があります!

峠の下りのマナー向上をサイクリスト目線から考える

菜の花台からヤビツ峠を目指してさらに登っていくと、急カーブや道幅の狭いポイントが頻繁に現れます。「登山者やサイクリストが表丹沢に来ることで地域が活性化するメリットがありますが、峠を下る時にスピードを出し過ぎるサイクリストもいると地域の方からの声も聞きます。マナーを守りながら走っていきたいです」と話す宮澤さん。解決策はないかと尋ねると、「コース上の各所に給水場所があれば、『休むためにスピードを緩めよう』という意識が働くと思うのでサイクリスト目線も伝え続けていきたいですね」と私見を答えてくれました。

そうこうしているうちに標高761mのヤビツ峠の頂に到着「ここで記念撮影を撮るのはサイクリストにとって儀式のようなものです」と宮澤さんがモニュメントの前に立つと、愛犬のしじみちゃんも慣れたような佇まいでじっと座っていました。

宮澤さんによると木製のモニュメントは珍しいんだとか

プロの指導で林道を走行するヒルクライム教室

参加者の皆さんの晴れやかな表情が素敵!

「チームでは毎年、ヤビツ峠で『ヒルクライム教室』を開催しています。教室では、さまざまなレベルのサイクリストがヒルクライムの魅力を満喫できるよう工夫しているんですよ」と宮澤さんが語る工夫の一つが、特別コース「羽根林道」の開放です。秦野市の協力も取り付け、普段は通行できない「羽根林道」をイベントのために特別開放しています。車の通行のない安全な道路でヒルクライムとダウンヒルの走行を学べるため参加者からも好評なのだとか。

すっかり宮澤さんの自転車熱に当てられた記者が思わず、「体力に自信はないけど走ってはみたくて、電動自転車でもヒルクライムやダウンヒルには参加できますか?」と聞いてみると「ロードバイクに乗ったことがなくても、電動自転車ならスピード感について行きやすいと思いますよ」と意外な回答。もちろん、ロードバイクの所持が参加の基本条件とはいえ、お持ちの自転車で参加できるか、一度チームに問い合わせてみてもいいですね。

「日本一きれいなヤビツ峠」を目指し、林道を整備

清掃を始めた頃

宮澤さんは、林道の整備も自らが率先して行っています。きっかけは、「自分の都合のいいときに使わせてもらうのではなく、自らできることを地域に還元して気持ちよく走りたいと思ったから」と宮澤さんは話します。さらに、ヒルクライム教室を開催前には、走行する道路を自ら清掃されるのだとか!

清掃前の林道の状態

はじめは竹箒一本から始まった林道整備ですが、一人での作業量に限界を感じていると次第にチームを支援する参加者の方から整備活動のための寄付金や仲間が集まるようになりました。

一人で始めた清掃の輪が広がってきた

「寄付金を使って、ブロワーを購入しました。空気の力で落ち葉などを吹き飛ばせるので一気に作業が捗るようになって本当に助かりました。地道な活動ですが、走行中に、綺麗だなと感動してもらいたいし、その思い出から“また秦野に来たい”と思って足を運んでもらいたい。“日本一きれいなヤビツ峠”を目指して、共に整備活動を楽しめる仲間が増えていくといいなと思います」と語ります。

林道を走行中、宮澤さんが「危ないな、ここ」と車を停めました。

すぐに写真を撮り記録をする宮澤さん

宮澤さんが駆け寄ったところを見ると、グレーチング(排水溝の金網のふた)の隙間がありました。その場で「これは動かせるかも」とあっという間に隙間をふさいでしまいました。

気づくと即行動、グレーチングの確認・整備をする宮澤さん

「こういう隙間に車輪がはまって転倒することがあるんです。道路の状況を秦野市と共有することもあれば、自分でその場ですぐにできることなら手を動かして修繕します」とまたしても、さすがのサイクリスト目線です。

あっという間にグレーチングの隙間を埋めた宮澤さん

枯葉を堆肥熱発電に活用するという農家さんと出会いました。「話を聞こう」と車を停め、羽根林道の整備などの情報を交換する宮澤さんのアンテナと柔軟な行動力が印象に残りました。

地域の農家さんと情報交換する宮澤さん

表丹沢にはお金を使わず遊べる自然豊かなスポットがたくさん

次に向かったのは、塔ノ岳や、鍋割山、丹沢山などへの登山口がある大倉です。大倉周辺には、神奈川県立秦野戸川公園や秦野ビジターセンターがあり、登山シーズンに限らずたくさんの人が訪れます。丹沢の山々から流れる水無川の自然を生かした川遊びやバーべキューなどが楽しめる「神奈川県立秦野戸川公園」は宮澤さんのお気に入りスポット。「秦野に来たらお金を使わなくても遊べる自然豊かなスポットがたくさんありますよ」と呼びかけていました。

青空の下、風の吊り橋と丹沢の山並みを背景に

ロードバイクで地域に根付いた歴史、文化を感じる

ヤビツ峠を走行する宮澤さん

世界中の山々をロードバイクで走行する宮澤さんにヤビツ峠に感じる魅力を聞いてみました。

「ロードバイクで山を登り下りしていると山の個性もよく見えます。ヤビツ峠は、表ヤビツ(秦野側からのルート)と裏ヤビツ(宮ヶ瀬湖側からのルート)でイメージがガラッと変わるところが面白いですね。表ヤビツは勾配が急で、山頂をゴールに走り切る、という気持ち良さがあり、裏ヤビツは自然の音を聞きながら森を散策しているような味わいがあります。特に木漏れ日が美しく好きで、飽きることがありません。だから“ヤビツ峠に行こう”となるんでしょうね。それに、『あ、無人販売の野菜があるな』と気付いて近くの人に話しかければいろんなことを見聞きします。話しながら、その地域に根付いた歴史や文化、習慣、食べ物を、深く知ることができるのも魅力です」

感動を生む体験を

菜の花台やヤビツ峠、神奈川県立秦野戸川公園と疾走してきた中で、最後に案内してくれたのは秦野市カルチャーパーク(平沢)にある「ランニングステーション」でした。施設内には無料で使えるロッカーに加えて、男女更衣室やシャワーブース、トイレ、イスや机が置かれており、サイクリストやランナーたちの憩いの場となっています。

年末年始を除く毎日午前9時から午後4時まで利用可能

「ロードバイクをきっかけに多彩なジャンルの人との交流の中でイベントを企画すると、次はイベントをきっかけに出会いが生まれるんです」とこれまでの経験を振り返ります。

「ロードバイクはあくまで移動手段。『その先にどんな感動体験を生み出せるか』と常に色々なアイデアを考えています。人が介在することで「自然」をより自然として活かせると思うんですね。僕が企画するイベントは、ロードバイクのテクニックだけではなく、その地域の魅力をどう演出し、参加者に楽しんでもらえるかを全力で考えます。過去には、農家さんの田んぼにテーブルをセットして農家さんが作った野菜をシェフがコース料理として振る舞う、というイベントを企画したことがありました。テーブルクロスをひくだけでも、スペシャルな感じになるでしょう?」と目を輝かせます。

青空の下、参加者と囲むスペシャルイベント

秦野で開催するイベントにも新たな趣向を取り入れようと考えを巡らせているようで、「秦野でのアイデアもたくさんありますが、一人だと腰が重い部分もあります(笑)。地域の方とコラボをしたいし、林道整備後に一緒にお弁当を食べる会などもしているのでご参加いただけると嬉しいですね。僕は真剣に楽しいことをやりたいんです」とにやり。

宮澤さんのアンテナ、冒険心、遊び心を通して、私たちも新たな秦野の魅力を体験できるかもしれません。ぜひ、Bellmare Racing Teamや宮澤さんのSNSを随時チェックしてみてくださいね!

チームカーの前で愛犬しじみちゃんとパチリ

■宮澤 崇史さん情報
公式ホームページ:http://bravo-tm.com
X:https://x.com/Bravotakashi
Instagram:https://www.instagram.com/bravo_takashi/

■Bellmare Racing Team情報
■住所:〒254-0026 神奈川県平塚市中堂18-8 E棟3F 特定非営利活動法人湘南ベルマーレスポーツクラブ
■電話番号:0463-25-1151(湘南ベルマーレスポーツクラブ)
■メッセージ・問合せ:下記フォームから
https://www.bellmare.or.jp/club/message/form/form.cgi
■「Bellmare Racing Team」チーム情報
公式ホームページ:http://lemonadebellmare.jp
Instagram:https://www.instagram.com/bellmareracingteam/
X:https://x.com/leomoteam

OMOTANライター 内田 くみ (うちだ くみ)
【得意分野】 人物インタビュー

私の強みは「魅力、想い、背景を引き出す取材・ライティング」です。
コーチングなどの心理の学びの中で質問・洞察・傾聴力を研鑽してきました。
表面的な言葉のみにとらわれず、インタビュアー自らが多角的な観点を持ち背景を考察する姿勢を日頃から大事にしています。

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