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【ライター記事】「秦野名水」OMOTAN名水スポット巡りと名水サミットinはだの

11月8日名水サミットinはだの

名水の里として知られる秦野市。OMOTANエリアをはじめ市内各地を歩けば、ふとした場所に湧水や美しい河川があり、この土地が水に恵まれていることを感じます。この地の地下深くには芦ノ湖の約4倍にあたる豊富な水が蓄えられ、日々の暮らしから観光まで、多くの場面でその恵みが生きています。
今回、表丹沢を代表する名水スポットを巡りながら、この地域ならではの「名水文化」に触れていきます。そして11月8日(土)には、神奈川県で初めての開催となる「名水サミット」が秦野で行われます。
名水を守り、楽しむ視点が集まるこのサミットを前に、改めて“名水の里秦野” の魅力を紹介します。

秦野市はなぜ「名水の里」と呼ばれるのか

水遊びスポットとしても人気の葛葉川

秦野市在住の記者ですが、このエリアがなぜ名水の里なのか知る機会はこれまでありませんでした。

今回の名水スポット巡りを前に名水の保全を担当されている、秦野市環境共生課に行き名水の里についてのお話しを伺ってきました。

「秦野市は、丹沢山地と大磯丘陵に囲まれた神奈川県で唯一の盆地にあります。この地形そのものが“天然の水がめ” の役割を果たし、市内には豊富な地下水が蓄えられてきました 。その量はおよそ7億5千万トン。芦ノ湖の約4倍にもなる規模です」

そんな驚きの数字を教えてくださったのは、環境共生課の谷芳生課長と秦野名水担当の露木聖士郎さん。

さらに、お二人は「この地下水は長い時間の積み重ねが育んだもので、およそ10万年前、川が山を削り、土石流のように運んできた砂礫(されき)が堆積し、そこに箱根火山の噴火で生じた火山灰が重なっていきました。地層が幾重にも重なった結果、水をため込む「器」としての盆地ができあがったのです」 と続けて話します。

私も実際に市内を歩いていると、あちこちで目に入る湧水や美しい河川に「水が豊かな土地なんだなあ」と感じることがあります。 名水の里と呼ばれる背景には、こうした大地の歴史と自然の営みがあるのです。

「秦野名水」を育む地下の仕組み

環境共生課の課長 谷芳生さんと秦野名水担当 露木聖士郎さん

「秦野に湧く水の背景には、ただの量の多さでは語れない“この土地ならではの仕組み” があります」と谷課長。

「注目したいのは、火山灰と砂礫が繰り返しミルフィーユのように堆積した地層です。箱根や富士山、さらに遠く九州の姶良(あいら)カルデラの噴火による火山灰までが積み重なり、厚みのある層をつくりました。砂礫は水を通しやすく、火山灰はろ過の役割を果たし、この組み合わせが水をきれいに保っています。

また、秦野盆地そのものは「渋沢断層」の沈降運動によって形づくられ、大地が沈み込み、自然と水をため込む器のような地形が生まれたのです。

さらに特徴的なのが「扇状地」。丹沢から流れ出た川が土砂を広げた地形で、水が地面にすっと染み込みやすく、地下へと運ばれていきます。その過程で自然にろ過されるため、クセがなく飲みやすい軟水が育まれてきました」

日々の暮らしの中でも、秦野ではちょっとした場所に水の気配があります。畑のあぜ道を歩けば小さな水路に出会い、耳を澄ませばさらさらと流れる音が聞こえる。そんな日常が、この土地の水の豊かさを教えてくれます。

OMOTANエリアの名水スポット3選

市内各所にある名水スポット

秦野市内には30カ所以上の名水スポットがあります。2025年春には「秦野盆地湧水群を巡れば、きっと出会えるあなたの『推し水』。」を合言葉に【秦野盆地湧水群選抜総選挙】が開催されました。

その中から今回は、OMOTANエリアを代表する3つのスポットを紹介します。

どのスポットも特色があり、それぞれの魅力を体感できる場所です。

市内には秦野駅の近くに多くの湧水があるほど水が身近ですが、ここで取り上げるのは雄大な景観とあわせて楽しめるロケーションにある湧水地ばかり。表丹沢ならではの自然を感じられる場所です。いずれも「年間を通じて温度が一定」で夏は冷たく冬は温かく感じるのが特徴です。気候と共鳴する水温も「おいしさ」をさらに感じさせてくれます。

護摩屋敷の水|ドライブや登山途中に人気の清涼地

護摩屋敷の水

「護摩屋敷の水」は、秦野の名水の中でも特徴的な存在です。ヤビツ峠に向かう途中にあり、車で気軽に立ち寄れる立地が魅力。ここ20年ほどでサイクリストやランナーの姿も増え、今では登山者とあわせて多くの人が休憩に訪れるスポットになっています。

護摩屋敷とは、山伏が木を炊き修行するところを指し、修行に訪れた僧たちがここで身を清めたと伝えられています。

地元の方によれば、この湧水は他の名水スポットと異なり、宮ケ瀬湖方面へ流れる水系とのこと。また一年を通して水温が低く、季節ごとに味わいが変わるのも魅力で、「紅葉の季節には少し甘みを感じる」と話していました。

記者が訪れたときは、静かな水場に何十本ものポリタンクを並べて汲んでいる方の姿がありました。観光というより暮らしの延長として水を運んでいるようで、この場所が“名所” である以上に“生活に根付いた水場” なのだと感じました。

竜神の泉|水無川上流、静けさに包まれる一滴

竜神の泉

「竜神の泉」は、水無川の上流、滝沢園を過ぎた先にひっそりと湧く泉です。山腹に竜の形をした岩があることから水を司る竜神が宿ると伝えられています。

車で向かうこともできますが、途中からは未舗装の道が続き、角がある石がごつごつしていてややハードです。

記者も道中もタイヤを痛めないか内心ひやひやしていました。実際に行く場合は少し注意が必要なスポットです。 訪問時も採水目的の人は少なく、登山の途中に立ち寄って水筒を満たすハイカーの姿が目立ちました。森の空気に包まれながら一口含むと、冷たさが体にすっと染みて、まさに“静けさの中で出会う一滴” という言葉がぴったりの場所でした。

葛葉の泉|秦野盆地湧水群選抜総選挙1位の人気スポット

葛葉の泉

「葛葉の泉」は、湧水群選抜総選挙で1位に選ばれたことで知られる人気の湧水です。駐車場やトイレが整備されていて、車でのアクセスも比較的容易。週末になると県外ナンバーの車も目立ち、駐車場が埋まることもあります。

すぐ近くには表丹沢野外活動センター や川遊びのできる場所があり、子ども連れでも楽しめる環境が整っています。

湧水地の横には大きなテーブルと椅子も設置されており、水を汲んだあとに腰を下ろしてひと息つけるのもうれしいところです。

記者が訪れた際にも、子連れの家族がポリタンクを抱えて水を汲む姿があり、レジャーとあわせて立ち寄る人の多さを実感しました。

横浜方面のコーヒー店が「秦野の水」としてこの泉を利用しているという話もあり、地域を越えて愛されていることが伝わってきます。 さらに、新東名高速道路の秦野丹沢スマートインターから近く全線開通によって今後はより多くの人が訪れるスポットになりそうです。

暮らしの中にある名水文化

秦野市の中心を流れる水無川

秦野の名水は、観光で訪れた方が特別に汲みに来るだけのものではありません。市内の上水道も地下水でまかなわれていて、家庭の蛇口から出る水も“名水” と呼べるもの。浄水の工程が少ないからこそ、素材のままのおいしさを普段の生活で味わえるのです。

湧水群選抜総選挙でも【水道水】が堂々の3位を受賞しました。

市の上水道には千村系・金井場系・八幡山系という三つの水系があり、それぞれ少しずつ味わいが異なるといわれます。

暮らしていると「どの地区の水か」で飲み口に違いがあることに気づき、同じ秦野でも地域ごとに楽しめるのが面白いところです。

環境省が主催した「名水百選選抜総選挙2015年」の“おいしさが素晴らしい「名水」部門”で、地下水をボトリングした「おいしい秦野の水~丹沢の雫~」が 全国第1位に選ばれています。暮らしの中で当たり前のように使っている水が、全国レベルで評価されているというのは、やはり特別なことだと感じます。

お茶を入れると香りが立ちやすい、浄水器のフィルターが長持ちする、風呂上がりに肌あたりがやわらかい――。秦野で生活しているとそんな小さな実感の積み重ねに、名水が暮らしに根付いていることを日々感じています。

名水サミットinはだの

11/8開催の名水サミットinはだの

2025年11月8日(土)、秦野市で「名水サミット」が開催されます。

環境省の昭和の名水百選と平成の名水百選のあわせて200の地点からなる「名水百選」の自治体が参加するサミットで、第39回を迎える歴史ある催しです。今回の秦野市開催は神奈川県内で初となります。

会場のサブアリーナではポスター展示や市内外の水関連団体による展示や解説の他、名水名人講のブース、名水を活用したさまざまなコーナーも予定されています。会場の外にはキッチンカーも並び、盛り上がる様子が目に浮かびます。

メインは午後からの一般向けシンポジウムで、冒頭には秦野市の講座を受講し認定された秦野名水名人による「秦野の名水紹介」があり、名水文化を支える市民活動に触れることができます。

その後の講演は市による取り組み紹介の他、専門家による基調講演が5本立てで行われます。

どの講演も「名水というのには訳がある」をテーマにしたショートレクチャーとなっているので、肩の力を抜いて参加でき、地形・地質、地下水、地下水汚染と条例の歴史、生物多様性など、多角的な視点から「名水」に迫る内容です。

そしてパネルディスカッションには、秦野市長、山北町長、南足柄市長が登壇。はだのブランドアンバサダーの立石純子さんが総合司会を務めるのも注目ポイントです。

屋外では「里山まつり」が同時開催され、木工体験など家族で楽しめる催しも用意されています。

事前申込でもらえるもりりんステッカー

事前申込者には受付で秦野のマスコットキャラクターもりりんのステッカーをプレゼント。少し懐かしいビックリマンチョコ風”の特典シールが配布される予定で、遊び心も感じられる企画です。

名水サミットは専門性のある講演から市民参加型の企画まで幅広くそろっていて、一日かけて「名水」を楽しめるイベントになりそうです。

名水を味わい、名水サミットで深める表丹沢の魅力

名水の里秦野

秦野の名水は、湧き出す泉をめぐる旅で楽しめるだけでなく、日々の暮らしの中にも息づいています。その豊かさを体感することが、地域をもっと深く知るきっかけになるのだと取材を通して実感しました。今回紹介した名水スポットはそれぞれに表情が違い、訪れるたびに新しい発見があります。

そして11月8日に開かれる全国名水サミットでは、専門的な学びと体験を通じて「名水の里秦野」の魅力をさらに深く知ることができます。

名水スポット巡りとサミットへの参加をあわせて楽しむことで、日常と観光がつながり、秦野市ならではの名水文化に触れられるはずです。ぜひこの機会に、秦野の水を味わってください。

第39回全国水環境保全市町村連絡協議会全国大会(名水サミットinはだの)
日程:2025年11月8日(土曜日)
会場:メタックス体育館はだの(秦野市総合体育館)
内容:全国水環境保全市町村連絡協議会全国大会、名水シンポジウム
HP:https://meisuisummit.my.canva.site/
公式SNS:https://www.instagram.com/hadano_meisui?igsh=MXY2NXF2bDg2YnZwaw==
事前申込:https://dshinsei.e-kanagawa.lg.jp/142115-u/offer/userLoginDispNon?tempSeq=108252&accessFrom=

護摩屋敷の水
住所:神奈川県秦野市寺山1692
アクセス:秦野駅より『バス』【秦21】「ヤビツ峠行き」で約45分、「ヤビツ峠」下車、徒歩約30分

竜神の泉
住所:神奈川県秦野市戸川(市道52号線沿い)
アクセス:渋沢駅より『バス』【渋02】「大倉行き」で約15分、「大倉」下車、徒歩約45分

葛葉の泉
住所:神奈川県秦野市菩提2317-15
アクセス:秦野駅より『バス』【秦51】「菩提経由渋沢駅行き」で約15分、「菩提原」下車、徒歩約50分

OMOTANライター 及川 じゅりこ (おいかわ じゅりこ)
【得意分野】 子どもと楽しむ

3年前に子育て環境を重視して都心から秦野市に移住してきた週1都内勤務のほぼリモートワーママです。
やんちゃな息子2人と新しい事に挑戦したり、楽しいスポットにお出かけすることが大好き!OMOTAN子連れスポットのリアルな体験をお届けします。

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